電子署名法・電子帳簿保存法などが整備され、現在は大半の契約書を電子契約できるようになりました。しかし一部の契約では、例外的に書面での作成・交付が義務付けられており、導入の際は注意が必要です。
基本的にすべての契約書が電子契約できる
「そもそも、電子契約は法律的に問題ないのか?」このような疑問を持つ方は多いです。実際、ほとんどの契約において書面での契約書・印鑑などは不要であり、法律上は口約束ですら契約が成立します。
ただし、口約束で契約した場合は「契約内容を確認できない」「契約を締結した証拠が残らない」という問題があったため、書面での契約書を証拠としています。つまり、証拠を残せれば電子契約でも全く問題ありません。
現在は「電子署名法」、「e-文書法」、「電子帳簿保存法」といった法律が整備されたことで基本的に全ての契約書を電子化できるようになり、また、電子署名が付与された電子契約書に証拠力が認められることとなりました。
しかしながら、電子化をするにあたり、契約相手方の承諾や希望が必要な契約書が存在します。そういった電子化に条件がある契約書と無条件に電子化が可能な契約書と書類の例は以下の通りです。
- 取引基本契約書
- 売買契約書
- 業務委託契約書
- 秘密保持契約書
- 請負契約書(但し、建設業法19条3項を除く)
- 発注書・発注請書(但し、下請法3条2項を除く)
- 雇用契約書
- 賃貸借契約書
- 代理店契約書
- 保証契約書
- サービス利用契約書
- 誓約書
- 顧問契約書
契約相手方の承諾が必要な契約書と書類
- 建設工事に関わる請負契約書(建設業法19条2項・3項)
- 下請会社に対する受発注書(下請法3条)
- 定期借地契約書(借地借家法22条)
- 定期借家契約書(借地借家法38条1項・4項)
- 宅建業者の媒介契約書(宅地建物取引業法34条の2第1項・11項)
- 不動産売買における重要事項証明書(宅地建物取引業法35条1項柱書・8項)
- 宅地建物売買等契約締結時に交付する契約書 (宅地建物取引業法37条1項・2項・4項・5項)
- 訪問販売等で交付する書面(特定商取引法4条、5条、18条、19条、37条、42条、55条)
契約相手方の希望が必要な契約書と書類
- 労働条件通知書(労働基準法15条1項、同施行規則5条4項)
- 派遣労働者への就業条件明示書面(派遣法34条、施行規則26条1項2号)
- マンション管理等委託契約書(マンション管理適正化法 73条、施行令15条4項、施行規則84条の3)及びこれに伴う重要事項説明書(同法72条、施行令15条1項・2項、施行規則84条の2)
【例外】電子契約できない書類
契約の中には、法令によって書面で契約することを義務付けられている契約が存在します。このタイプの契約では、電子契約で十分な証拠を残せるとしても、契約を正式に成立させることはできません。 電子契約できない契約書、電子化が不可能な書類は以下の通りです。- 事業用定期借地契約書(借地借家法23条)
- 任意後見契約書(任意後見契約に関する法律3条)
- 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約(企業担保法3条)
上記の3つの契約が電子化できない理由は、公正証書(書面)による契約締結が法的に義務付けられているためです。公正証書とは、私人(個人または法人)からの嘱託に基づき、公務員である公証人が作成する文書のことです。公正証書の作成手続は、公証人法(明治1年法律第53号) という法律により、厳格に規定されています。
公正証書についても、作成に係る一連の手続についてデジタル化を行うことが予定されており、実務に携わる実務者との協議が行われています。これらの契約書もいずれ電子契約ができる可能性があります。
参考:法務省:公証実務のデジタル化に関する実務者との協議会
2022年5月18日から不動産契約の電子化が全面解禁!
改正宅地建物取引業法施工により2022年5月18日から不動産取引に係る契約書の電子化が可能となりました。「書面」での契約義務が撤廃され、一気にオンラインでの契約締結・契約書の交付が普及していくと考えられます。2023年6月から訪問販売などの特定商取引でも電子化解禁!
2023年6月に改正特定商取引法が施行され、従来書面での交付が義務付けられていた12種類の特定商取引について、電磁的方法による交付が可能になりました。具体的には、特定商取引にあたる次の7つの取引についても、契約相手方の承諾があれば電子契約が可能になりました。
- 訪問販売
- 通信販売
- 電話勧誘販売
- 連鎖販売取引
- 特定継続的役務提供
- 業務提供誘引販売取引
- 訪問購入
また、消費者からのクーリングオフ通知書面も電磁的方法を用いることが認められました(根拠法令:改正特商法9条1項など)。
ただし、契約相手側の合意が必要な点と、容易に内容を確認・保存できる方法で行うことが注意点です。また、書面交付が困難な場合や相手が同意していない場合は、従来通り書面での交付が必要です。
クーリングオフについては、こちらの記事もご参考ください
【まとめ】
ほとんど全ての契約書で電子契約は可能ですが、一部で書面での契約が必須の契約書があることをお伝えしました。検討の際は、自社で扱う契約書が電子契約できるのか確認が必要です。ただし、2021年5月12日に参議院本会議で可決成立したデジタル改革関連法のように、今後も電子契約できる契約書は増えていくと予測されます。 電子契約の導入を検討する際は最新の情報をチェックし、電子契約できる契約書・できない契約書を正確に把握したうえで導入を検討しましょう。電子契約をもっと知る
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