電子契約の「事前承諾」実務ガイド

2026/04/17 2026/04/17

契約締結の方法として電磁的方法を選択する場合、原則として、電磁的方法によることについて契約締結の相手方から事前承諾を得ることは必須ではありません。そのような事前承諾がなくとも、契約の両当事者が電磁的方法により署名等をすれば、法律上は有効に契約が成立したこととなります。しかし、電磁的方法により契約を締結することについての事前承諾の記録がないことによるリスクや法律上「事前承諾が絶対に必須」となるケースも存在するため、後々のトラブルを防ぐためにも、電磁的方法によることについての事前承諾を得た上で、何らかの形で「承諾を得た記録」を保存しておくことが実務上は推奨されます。

当記事では、電子契約の事前承諾の重要性や、実務で使える事前承諾のメール・書面のひな形もご紹介します。

事前承諾が「必須」ではないが「やるべき」とされる理由

原則として、電磁的方法により契約を締結する際に、電磁的方法によることについての相手方の事前承諾は、法律上必須となるものではありません。また、2026年1月1日施行の「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」(旧下請法、(以下「取適法」といいます)においても、従来と異なり、中小受託事業者からの承諾がなくとも発注内容等について、電磁的方法による明示が可能とされたことからも、ビジネス界全体の空気が「電子契約は事前の断りなしでも失礼ではない(あるいは法的リスクが低い)」という方向に傾きつつあるとも言えます。

しかし、「法律で決まっていない=やらなくていい」というわけではないのが、実務の難しいところです。実務においては、事前承諾についての記録がないことによるトラブル防止や、コンプライアンスの観点から、契約を電磁的方法によることについての事前承諾が重要とされています。

以下では電磁的方法によることについての事前承諾の法律上の位置づけを整理した上で、なぜ事前承諾を得ることが「必須」ではないのに「やるべき」なのかを解説します。

1. 法律上の位置づけ(なぜ「必須」ではないのか)

【民法・電子署名及び認証業務に関する法律(以下「電子署名法」といいます。)】
民法上は、原則として、契約の成立は意思の合致があれば足りるとされています(民法522条1項)。また、電子署名法上は、本人による電子署名が行われた電磁的記録は真正に成立したものと推定するとされています(電子署名及び認証業務に関する法律)。
以上から、契約の締結の方法を電磁的方法とする場合に、「事前に相手の承諾を得なければならない」という規定はありません

2. 実務上の「必須」に近い理由(なぜ「やるべき」なのか)

⑴ 「言った・言わない」のトラブル防止、証拠力の補強
電磁的方法により契約を締結することについて、相手方の事前の承諾を得ていない場合は、後から「そんな話は聞いていない」「勝手に送られてきたので有効ではない」と主張されるリスクを否定できず、契約の成立を否定される可能性があります。万が一、裁判などで「このメールアドレスは自分のものではない」「操作を誤っただけだ」と主張された際、事前に「このメールアドレスで電子契約を行います」という合意の記録があれば、そのような主張に対する強力な反論になり得ます。例えば、メールで一通「電子契約で進めます」と伝え、それに対する相手方の合意の履歴があるだけで、こうした無用な争いを未然に防ぐことができます。

⑵ 税務調査(電子帳簿保存法)への対応
税務調査の際、電子データが正しく取り交わされたものであることを証明する資料として、経緯(承諾のプロセス)を問われる可能性があります。
記録がないと承諾の経緯を証明することができませんが、「双方が合意の上でこの形式を採用した」という記録が残っていれば、承諾の経緯を証明することができます。

⑶ 電子署名法などの要件確認
利用する電子契約サービス(立会人型など)によっては、本人性が「メールアドレスへの到達」に依存する場合があります。「確かにそのメールアドレスで契約を受け取ることを承諾した」という記録は、記名押印に代わる意思表示の裏付けとして補完的な役割を果たします。

⑷ 相手方の社内規定
相手企業が「契約は実印(紙)に限る」という社内規定を持っている場合、相手企業が電子契約手続きを進めることができず、契約締結まで二度手間になったり、相手の担当者と関係が悪化する可能性があります。

事前承諾の記録の残し方

電子契約利用の事前承諾は、相手との関係性や、契約の重要度に応じて「書類」か「メール」かを選択します。

① メールで記録を残す
メールで記録を残す方法は、最も一般的でスピーディーです。日常的な取引や、スピード重視の契約に適しています。

  • 方法: 契約締結の承諾確認をメールで送り、相手から「承諾する」旨の返信をもらう。
  • ポイント: 相手からの電子契約利用の承諾の旨が記載された返信メールは、本文の他、送信日時やアドレスも含める形でバックアップをとるか・PDF化するなどして記録を確実に保管しましょう。

② 書類(紙)を交わして記録を残す
より強固な証拠が必要な場合には、書類(紙)で記録を残す方法が推奨されます。重要な取引や新規取引先との契約、ITに不慣れな保守的な企業との取引に適しています。

  • 方法: 電子取引/電子契約利用に関する同意書等を最初だけ紙で取り交わす。
  • ポイント: 内容を「今後の全ての取引を電子契約で行う」という包括的な同意にしておけば、2回目以降の手間が省けます。

事前承諾の記録を残すためのメールテンプレート

ここからは、メールで電子契約利用の事前承諾と電子契約送付先のメールアドレスを確認する場合の例文をご紹介します。

【メールの例文①】初めての相手や公式な依頼の場合

件名:契約締結方法(電子契約)に関するご案内とご承諾のお願い

本文

〇〇〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。
株式会社〇〇〇の〇〇でございます。

この度の「■■■■■(契約書名)」の締結にあたり、
弊社ではDX推進および印紙税削減・事務効率化のため、
電子契約★★(サービス名)を利用したお手続きをお願いしております。

つきましては、以下の通り、電磁的方法による締結および書類交付について、
あらかじめご了承いただけますでしょうか。

【電子契約の流れ】
1:本メールへのご返信にて、電子契約利用へのご承諾をいただきます。
2:弊社より、電子契約サービスを通じて契約書の確認用URLを送付いたします。
3:内容をご確認の上、画面上の指示に従って締結の操作をお願いいたします。

本件、上記の方法・電子契約での締結で問題なければ、お手数ですが、ご承諾いただける旨と電子契約の宛先とするメールアドレスをご返信くださいますようお願い申し上げます。

※電子契約のご利用が難しい場合は、書面(紙)にてご対応させていただきますので、書面(紙)ご希望の旨をご返信にてお知らせください。

ご不明点などございましたらご質問下さい。
お手数をおかけしますが、ご確認くださいますようお願い申し上げます。

株式会社〇〇〇
〇〇 〇〇〇

【メールの例文②】既に関係性がある相手への案内

件名: 本件の契約締結(電子契約)についてのご確認

本文

〇〇〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。
株式会社〇〇〇の〇〇でございます。
先日は、お打ち合わせのお時間を頂き誠にありがとうございました。

本件の契約締結につきまして、弊社ではペーパーレス化のため「電子契約」を採用しております。

大変お手数ではございますが、電子契約(電磁的方法)での契約締結および書類交付の承諾をいただける場合は、ご了承の旨と電子契約の宛先とするメールアドレスをご返信いただけますでしょうか。

電子契約(電磁的方法)での契約締結および書類交付にご承諾いただける場合は、ご返信を頂き次第、契約書の確認URLをお送りさせていただきます。
※書面(紙)のご案内も可能ですので、気兼ねなくお申し付けください。

ご不明点などございましたらお気軽にご質問下さい。
お忙しいところ恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。

株式会社〇〇〇
〇〇 〇〇〇

【メールの例文③】今後、何度も取引が発生する場合の案内

件名: 今後の契約手続きの電子化に関するお願い

本文

〇〇〇〇株式会社
〇〇様

いつもお世話になっております。
株式会社〇〇〇の〇〇でございます。
昨日はお打ち合わせのお時間を頂き誠にありがとうございました。

弊社では、お取引先様との事務手続きの迅速化のため、今後の契約締結および書類交付を原則として「電子契約(電磁的方法)」へ移行することといたしました。

今後の貴社との取引につきましても、電子契約(電磁的方法)での運用にご承諾いただけますでしょうか。一度ご承諾いただければ、今後の各種契約書や発注書等のやり取りもオンライン上で完結し、郵送の手間や印紙の費用が不要となります。

お手数ではございますが、本運用への切り替えについてご了承いただける場合は、ご承諾いただける旨と電子契約の送付先とするメールアドレスをご返信頂けますと幸いです。
※書面(紙)のご案内も可能ですので、気兼ねなくお申し付けください。

ご不明点などございましたらご質問ください。
何卒ご理解とご協力のほど、お願い申し上げます。

株式会社〇〇〇
〇〇 〇〇〇

メールで承諾を得る場合のポイント

電子契約利用の承諾の記録をメールのやりとりで残す際のポイントをご紹介します。

①「電磁的方法」という言葉を入れる
上記で紹介したメールテンプレート内にもさりげなく「電磁的方法」を入れていますが、これは、後述する電磁的方法によることについての同意の取得が必須な法律の用語を意識したものです。後から「法的な説明を受けていない」と言われることを防ぐ役割もあります。

②電子契約の「送付先アドレス」も確認する
多くの電子契約システム・サービスでは、メールで契約書にアクセス・確認できるURLを送付する仕組みのものが多いため、取引をスムーズに行う・締結後のトラブル防止のためにも、承諾の文言とあわせて、電子契約送付先のメールアドレスもあわせて確認・記録を残すことをおすすめします。

③電子契約のメリットを書く
電子契約の利用が「重たい作業ではない」ことや、「時間やコストの削減につながる」等のメリットを伝えることで、電子契約利用の承諾を得やすくなります。初めての打診や、初めての取引に場合には、自社の都合のみではなく先方のメリットも伝えることがおすすめです。

事前承諾の記録を残すための書面(紙)テンプレート

ここからは、書面(紙)で電子契約利用の事前承諾と電子契約で利用するメールアドレスの確認を得る場合のひな形をご紹介します。

202●年 ●●月 ●●日

〇〇〇株式会社
〇〇〇〇〇〇〇〇 御中

電子契約利用に関する同意および印影(署名)代用アドレス確認書

貴社と当社との間で行われる契約締結および書類の交付(以下「本取引」といいます)に関し、電子契約システム(電磁的方法)を利用すること、および電子署名等に用いるメールアドレスを以下の通り指定することに同意します。

1. 電子契約への同意
当社は、本取引に係る契約書、注文書、その他通知について、書面(紙)の交付に代えて、貴社が指定する電子契約システムを利用した電子データによる締結・受領を行うことに同意します。

2. 電子署名に用いるメールアドレスの指定
本取引において、当社の記名押印(権限を有する者による意思表示)に代わるものとして、以下のメールアドレスを使用するものとします。当該アドレス宛に送付された書類に対し、システム上で行われた承認操作は、当社の正当な権限に基づく有効な意思表示とみなすものとします。

項目 登録内容
社名
部署名
役職名
氏名(署名権限者)
指定メールアドレス

3. 管理責任
当社は、前項に指定したメールアドレスおよび当該システムへのアクセス権限を自己の責任において厳重に管理するものとします。万が一、メールアドレスの変更や盗用、不正アクセスの疑いが生じた場合は、そのことにつき速やかに貴社へ通知の上、速やかに新たなメールアドレスを貴社にお伝えします。

4. 有効期間
本同意書の有効期間は、本合意締結の日から本取引が終了する日までとします。ただし、いずれか一方から書面による特段の申し出がない限り、以降の取引においても継続して適用されるものとします。

株式会社●●●●●●●●       
代表 ●● ●●●    印

■電子契約利用の事前承諾・アドレス確認書の作成・運用のポイント

【1】「包括的」にする
今回のみではなく「今後の取引全般」を対象にすることで、個別の契約ごとに同意書を取る必要がなくなります。

【2】「電磁的方法による提供への同意」
この一言があることで、建設業法などの「書面交付義務」がある場合でも、電子データでの交付が適法(相手の同意がある状態)と認められやすくなります。

【3】管理方法
この同意書自体は「紙」で回収するため、スキャンしてPDF化し、電子契約システム内の「関連書類」としてアップロードしておくと、一元管理できて便利です。

【4】「共有アドレス」か「個人アドレス」か
相手企業によっては、担当者の異動を考慮して keiyaku@sample00.com のような共有アドレスを希望する場合があります。その場合でも、署名権限者を記載してもらうことで、誰がそのメールを見て承認する責任者であるかが明確になります。

【5】最悪はPDFでの回収もOK◎
この用紙を郵送するのが手間な場合、この内容をPDFで送り、相手に記入・押印したものをスキャンして送り返してもらうだけでも、メールのみの承諾より格段に証拠力が高まります。

■郵送時の添え状テンプレート

以下では、書面(紙)で同意書を郵送する際に同封する、丁寧な「添え状(送り状)」のひな形をご紹介します。

202●年 ●●月 ●●日

株式会社●●●●●●
代表 ●● ●●●様

〒000-0000
東京都〇〇区〇〇〇〇 00-000
〇〇〇株式会社
〇〇 〇〇〇
MAIL:ooooo@oooo.oo.oo
TEL:03-0000-0000

電子契約利用に関する同意書のご送付について(ご案内)

拝啓
時下ますますご清栄のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

さて、弊社では昨今の社会情勢およびデジタルトランスフォーメーション(DX)推進の一環として、契約締結業務のペーパーレス化を進めております。つきましては、今後貴社との間で取り交わす契約書類等について、従来の紙による署名・押印に代わり、電子契約システム(電磁的方法)による締結へ移行させていただきたく存じます。

電子契約への移行により、貴社におかれましても以下のメリットがございます。

  • 印紙税の削減: 電子契約のため、印紙の貼付が不要となります。
  • 事務負担の軽減: 郵送作業や製本の手間がなくなり、即時の締結が可能となります。

今後の円滑な取引継続のため、同封の「電子取引利用に関する同意書」の内容をご確認いただき、ご署名・ご捺印の上、同封の返信用封筒にてご返送賜りますようお願い申し上げます。

なお、システム利用にあたっての初期費用や月額費用等は、貴社側には一切発生いたしませんのでご安心ください。

ご不明な点などがございましたら、上記連絡先までお問い合わせいただけますと幸いです。
何卒ご理解とご協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

敬具

【同封書類】
電子取引(電子契約)利用に関する合意書 2部
返信用封筒 1通

以上

事前承諾を得ない場合のリスク

電子契約利用に関して事前承諾を得なかった場合、「法律上問題が生じ得る」ケースと、「実務上のトラブル」で済むケースの2パターンに分かれます。

リスクの種類 内容
法律上問題が生じ得るケース 法律上のリスク 特定の法律(建設業法・特商法等)下では行政処分や罰則があります。
証拠力のリスク 「なりすまし」や「操作ミス」を主張される可能性を否定できない。
実務上のトラブル 関係性のリスク 契約の締結方法についての社内ルールがあるような場合には、相手の社内ルールを無視した形になり、信頼関係が損なわれる。
事務的なリスク 相手方の会社が紙の形式でしか契約を締結しないという運用になっているような場合には、結局「紙で出し直せ」と言われ、印紙代と郵送費が後出しで発生する。

1. 法律上問題が生じ得るケース

以下のケースでは、事前承諾なしに電子化すると「法令違反となります。

建設業法などの特定業種
例えば、建設工事の請負契約において、相手の承諾なく電磁的方法により契約を締結した場合、監督処分や刑事罰の対象になるリスクがあります。

労働条件通知(労働基準法)
労働条件の明示義務について、原則は書面交付となっているため、従業員が「紙でほしい」と言っているのに無理やり電子だけで通知し、承諾の記録もない場合、法定の明示義務を果たしていないとみなされ、30万円以下の罰金が科される可能性があります。

特定商取引法(消費者向け)
消費者から承諾を得ずに電子交付した場合、書面交付義務違反となり、クーリング・オフ期間がいつまでも始まらない(数年後でも契約解除される)という致命的な不利益を被ります。

2. 実務上のトラブルになるケース(一般的なBtoBの契約など)

取適法の対象取引や、一般的な売買契約・NDAなどの場合、事前承諾がなくても「即、法律違反」にはなりませんが、以下のような泥沼の展開が予想されます。

「契約の成立」を否定される(ごねられる)
トラブルになった際、相手から「そのメールアドレスは共有PCで誰でも触れるものだった」「担当者が勝手に操作しただけで会社は承諾していない」と主張される隙を与えてしまいます。

事務手続きの差し戻し
相手企業の社内規定で「電子契約は原則禁止」となっている場合、勝手に送ると相手の担当者が社内で立場を悪くし、結局「紙でやり直してくれ」と言われ、倍の手間と時間がかかってしまいます。

税務調査での指摘
電子帳簿保存法上、電子データは「正しくやり取りされたもの」である必要があります。承諾のプロセスが不明透明だと、税務調査時に「本当に双方が合意して作成されたデータなのか?」と疑念を持たれる材料になってしまう可能性があります。

電子契約の事前承諾に関するよくある質問

Q.電子契約の事前承諾は法律で義務付けられている?

A.すべての契約で必須ではなく、一般的なBtoB契約(売買、NDAなど)や、2026年施行の「取適法」対象取引では、法律上の事前承諾なしに電子契約を送付しても、双方の合意があれば契約は有効に成立します。

Q.法律上「絶対に事前承諾が必要」なケースは?

A.建設業法(建設工事請負)、特定商取引法(消費者向け販売)、労働基準法(労働条件通知)などが適用されるケースでは、電子化にあたって相手方の承諾を得ることが法律で義務付けられています。

Q.2026年施行の「取適法」で、電子化のルールはどう変わった?

A.これまでの下請法では必須だった「電子化への事前承諾」が原則不要となりました。ただし、相手から「紙(書面)でほしい」と請求された場合は、速やかに書面で交付する義務が新たに課されています。

Q.法律で義務付けられていない場合でも、承諾の記録を残すべき?

A.承諾の記録を残すことを推奨します。記録がないと、後日トラブルになった際に「操作ミスだった」「なりすましだ」「承諾した覚えがない」といった否認をされた際、会社を守る証拠が不足するリスクがあります。

Q.事前承諾の記録は、メールでのやり取りだけでも有効?

A.有効です。「電子契約で進める旨」を伝え、相手から「承知した」という返信をもらったメール履歴があれば、実務上の証拠として機能します。

Q.電子契約の通知メール内に「承諾いただける場合はURLをクリックしてください」と記載するだけでも事前承諾は有効?

A.法律上は有効ですが、「事前承諾」としての証拠力は一段階下がります。
電子契約システムから送られるメールにその一文が入っていれば、相手がURLをクリックして署名した時点で「電子契約に同意した」とみなされますが、相手が「契約内容を確認するためにURLを押しただけで、電子契約という形式に同意したつもりはない」と主張する隙を与えてしまう可能性があります。
電子契約の通知メールで事前承諾を済ませたい場合は、「URLをクリックし、署名完了をもって電磁的方法による交付に同意したものとみなします」など、一歩踏込めた確定的な表現にすることをおすすめします。

Q.電子契約の承諾を得る際、送付先メールアドレスの確認は必要?

A.必須ではありませんが、非常に重要です。誰のメールアドレスを「実印代わり」として使用するかを明確に合意しておくことで、権限のない第三者による署名といったトラブルを防ぐことができます。

Q.もし相手が「電子契約に承諾していない」と後から主張してきたら?

A.システム上の操作ログ(監査レポート)と、事前にやり取りした承諾メール(または書面)を提示して、客観的な事実に基づき説明を行います。

Q.事前承諾を得る手段は「メール」と「書面(紙)」のどちらが良い?

A.取引の重要度や頻度に合わせて使い分けるのがベストです。単発の取引や、すでに関係性がある相手との契約、相手がスピード重視の締結を求めている場合や、ITツールに慣れている場合はメールでの承諾がおすすめです。
今後の全取引を電子化するための合意を公式に結びたい場合や、相手が保守的な大企業やIT化に慎重な姿勢を示している場合には、長期視点・確実性を考慮し書面(紙)での締結がおすすめです。

まとめ

電磁的方法による契約締結についての事前承諾は、全ての契約で必要となるわけではありません。「取適法」が2026年1月1日から中小受託事業者からの事前承諾がなくとも電磁的方法による発注内容等の明示を認めるなど、利便性は飛躍的に向上しました。しかし、「法律上不要」は実務の「対策不要」を意味しません。建設業法や労働法など承諾が必須となる例外への目配りはもちろん、何より「承諾を得た記録」がない電子契約は、後々の否認トラブルを招く火種となる可能性があります。

デジタル化の本質は、単なる効率化ではなく「信頼の可視化」です。一方的な押し付けを避け、メールや書面で一言「承諾の記録」を残す。この一手間が、会社を守る最強の盾となり、2026年以降の誠実なビジネススタイルを形作ります。