取り決めや約束事を交わす場面で、大きな意味を持つのが契約書です。受発注や売買、権利や義務における決定事項、また財産についてなど多くのシーンで契約関係を結ぶ必要が生じます。
「契約」そのものは口約束でも成り立ちますが、トラブルの際には契約書の有無が判断を左右するのも事実です。だからこそ、捺印の仕方や押印の位置など、きちんとした書式にのっとって作成しなくてはなりません。
この記事では、契約書における捺印や押印のルールを今一度確認し、図解を交えて解説していきます。契約書作成の参考にしてください。
【必須】必ず押印が必要な場所
さまざまな場面で取り交わされる契約書。押印・捺印があれば、文書の効力をより高めることにもつながります。必ず押印するべき場所は次のようになります。
契約印(署名捺印・記名押印)
契約書の内容に同意した証で押す印が契約印です。契約する本人の名前を記した後、末尾にあたる場所に押します。直筆の署名の後に押された印は署名捺印で、自署以外の方法で記名された末尾に押すのが記名押印です。
自署とは自ら名前を書くこと、記名とは、氏名を彫ったゴム印やパソコンでの記入などが該当します。前者は「捺印」、後者は「押印」と略されます。契約を交わす甲乙それぞれが捺印、押印します。
消印(収入印紙)
文書の種類によっては、印紙税が課せられるものがあります。このように課税される文書の作成に用いられるのが収入印紙です。
収入印紙は文書に貼付した上で、印紙と文書それぞれにまたがって印を押す必要があります。これが消印です。印紙に消印が残されていれば、使用済みであることの証明になります。
印紙を使用した証となる消印がないなど押印のルールが守られていない場合、印紙税を納付したとは見なされないため注意が必要です。一方、消印はシャチハタや署名でも代用できます。
消印の場合は納付した証拠が残ればいいわけですから、契約書など文書で用いた印鑑でなくても構いません。消印の押す場所に決まりはなく、左上部分に押印するのが一般的です。
消印を押印するのは文書に記名・署名した人、つまり契約の当事者(または代理人)です。契約者全員が押印するのではなく、当事者の内1人が消印すれば問題ありません。加えて、控えを含め契約書が2通以上になるケースでは、それぞれに収入印紙を添付する必要があります。覚えておきましょう。
場合によって押印する必要があるもの
契約書の枚数や契約者の人数など、条件に応じて押印が発生する箇所、慣例として押印することになっている箇所も存在します。
このような「すべての契約書に必須なわけではないが、場合によっては押印の必要が発生する押印箇所」を解説します。
契印(2ページ以上ある契約書)
契約の内容によって契約書が複数枚にわたるケースはよくありますが、複数枚の契約書はページの差し替えなど、内容改ざんなどが起こる可能性も否定できません。
このような契約書の内容改ざんなど不正防止のために押されるのが契印です。法的に義務付けられているわけではありませんが、不正対策のため押印することが慣例となっています。
契印の押印方法は、作成枚数が1枚のときと同じく署名捺印もしくは記名押印をしたうえで、さらにページの見開き部分にも押印します。見開き部分がちょうどまたがるように押印するのが基本です。署名捺印(記名押印)と同じ印鑑を使います。また契約に関わる甲乙双方が押印する決まりです。
後述する割印と契印の違いですが、割印が2部以上の契約書が同一であることを証明するものであるのに対し、契印は2ページ以上の契約書が同一の契約書のものであることを証明するために使用するという違いがあります。
【豆知識】袋とじ製本で契印を効率化
ホッチキス留めした契約書を製本テープを使って本のように契約書をまとめる製本方法を「袋とじ製本」といいます。
この袋とじ製本には、押印する回数を減らし、また、丁寧に背表紙などを施すことで契約書を改ざんしにくくするというメリットがあります。よって、契印が必要な契約書は袋とじ製本で作成するのがおすすめです。
袋とじ製本された契約書では、製本テープなどを施した部分と契約書本体にまたがるように押印します。製本しないままの契約書の場合、契印は見開き部分すべてに押印しなければなりません。製本部分にのみの押印で済むわけです。
印鑑は契約書の表面、裏面、表裏両方のどの部分に押印してもOKですが、裏面に押すケースが多いです(従来は表面に押すことが多かったようですが、次第に裏面に押す人が多くなりました)。
契約書の製本の方法は、袋とじ部分をまとめて背表紙にできるのであれば、紙とのりで貼り付けても構いません。しかし、このやり方は手間がかかるため、製本テープを使うのがおすすめです。ロールタイプの他、最初からA4サイズにカットされているテープも市販されていますので活用してみてはいかがでしょうか。
割印(控えを含む契約書が2部以上ある場合)
割印は複数の契約書にまたがるように押印することで、控えなど契約書が2部以上ある場合に押印する印鑑です。押印に法的な義務はありませんので省略も可能ですが、押印するのが慣例となっています。
割印が用いられている理由は不正対策です。
割印が押されていれば原本と控え(写し)が対になり、関連している証となるため、割印の印影をパズルのように照合し、一致させられれば同一性を示すことが可能となります。このような効果から契約書改ざんのリスクを避けるために押印されることが多いです。
契約書が2部の場合、縦か横のどちらかに文書を少しずらし、それぞれをまたぐ形で押印します。契約書のそれぞれに、押印がほぼ半分ずつされている状態です。契約書が3部の場合も、3枚をずらし、またがるように割印をします。契約書の上部分に押すのが一般的だとされます。
割印は契約に関わるすべての人が押すもので、2者間および3者間以上での契約であっても割印に順序の決まりはありません。基本的には甲乙丙の順に押印すれば無難なので、順番に迷った場合は甲乙丙の順で押印すればよいでしょう。
【豆知識】3部以上ある契約書は2枚ずつ割印を押すと効率的
控えを含む3部以上の契約書に割印を押すケースでは、最初に甲(契約書1枚目)と乙(契約書2枚目)の契約書に割印を押し、次に乙(契約書2枚目)と丙(契約書3枚目)の契約書に押印する方法をとるのがおすすめです。
甲と乙、乙と丙が同一であれば甲=丙も示せるため、この方法もビジネスの現場でよく使用されます。
3部以上の契約書に割印を押すケースでは、1回の押印でそれぞれの契約書にきちんと印影を残すのが難しい場合もあると思いますので、このように工夫して効率的に契約書を作成しましょう。
訂正印(各種訂正や条文の変更)
- 訂正したい箇所を二重線で消し、正しい内容に加筆修正
- 修正した部分の横や下部分に訂正印を押印(契約者全員が押す)
- 契約書の欄外に削除した行の行数と削除した字数、挿入字数を記載する
訂正印は契約書の文面の誤りを修正する際に使います。契約書のような重要な書類では、署名捺印(記名押印)に用いた印鑑と同じものを用い、訂正印とします。
訂正印の押し方ですが、まず訂正したい箇所を二重線で消し、正しい内容に加筆修正します。次に修正した部分の横や下部分に訂正印を押印します。最後に、契約書の欄外に削除した行の行数と削除した字数、挿入字数を記載すれば完了です(「○行目○文字削除○文字加入」と書きます)。
訂正印があることで、他の誰かではなく契約当事者が訂正したという証明になるため、契約者全員が訂正印を押印する必要があります。
捨印(将来の契約書の訂正対策)
契約書など文書の余白にあらかじめ押印しておくのが捨印です。契約書が当事者の手を離れ、後々修正箇所が見つかった際に訂正を委ねる形をとるものであり、、つまり捨印は「契約当事者でなくても、修正してもらって構わない」という意味での押印となります。
訂正に修正が見つかった時点で訂正したい箇所に押す訂正印とは異なりますのでご注意ください。
捨印の押印方法ですが、一般的に契約書の上部余白に押印します。署名捺印、記名押印した人すべてが捨て印を押印しなければなりません。軽微な誤字脱字を都度修正せずに済むなど、メリットもある捨印。しかし重要な書類の内容を変えられるリスクもあるため、安易に押印するのは考えものです。
止印(余白を埋める)
止印は契約書などの文末に押印し、文書の終わりを示します。特に文書の末尾に余白が多いときに用いられ、契約内容などを加筆、改変されるのを防止する役割を担うものです。止印には署名捺印や記名押印で使用した印鑑を使用し、契約書の作成者が押印します。
ちなみに、追記を防ぐために書く「以下余白」の記載と止印は同じ意味を示しています。よって、最初から文書に「以下余白」と記載されている場合は止印は不要で、逆の言い方をすれば「以下余白」で止印の代用ができるということになります。
押印を失敗したときの対処法【場所間違い・認印を押した・薄いなど】
- 全ケース共通:間違って押印した印影を二重線で打ち消し、その上に同じ印鑑を押印
- 押印場所を間違えた場合:「全ケース共通」の対処を行ったうえで正しい場所に押印
- 印影が擦れた場合:「全ケース共通」の対処を行ったうえで隣にもう一度押印
- 印鑑を間違えた場合:「全ケース共通」の対処を行ったうえで、隣に正しい印鑑を押印
どんなに慎重に押印しても、ミスすることはあります。また後々、押印をやり直さなければならないシーンもあるかもしれません。特に法的な効力が大きい「実印」を用いる場合は、細心の注意を払わなければなりません。押印を失敗したときのために、正しい対処法を頭に入れておくことが大切です。
まず、押印を失敗した際に共通している対処法が、間違って押印した印影(=失敗した印鑑の跡)を二重線で打ち消し、その上に被せる形でさらに押印することです(ピッタリと重ねるのではなく、少しずらして押印するのがポイント)。
そして、ここからの対応が間違いの内容によって異なってくるためよくお読みください。
押印する場所を間違えたケースでは、間違って押した印影を二重線で消し、被せて押印した後、正しい場所に再度押印すれば修正完了です。
印影が擦れていたり、ぼやけたり欠けたりしている場合は、間違って押した印影を二重線で消し、被せて押印した後、隣にもう一度押印します。
押印する印鑑の種類を間違った場合は、間違って押した印影を二重線で消し、被せて押印した後(※ここに押すのは間違った印鑑)、隣に正しい種類の印鑑を押します。
修正方法に関する注意点ですが、二重線のみでの修正では当事者以外の人間でもできることになってしまい、契約書の信頼が低下するのでNGです。
また、はっきり押印できなかった際に、上からかぶせて押印しなおすのもおすすめしません。契約書でも認印での押印であれば意思を確認する目的が大きいため、多少印影がかすれていても問題がないこともあります。しかし実印は厳密な照合が欠かせません。印影が本人のものと認められなければ意味がありませんので、しっかりと手順を踏んで修正するようにしてください。
【まとめ】複雑な押印の手間は電子契約で簡単に削減できる
ここまで契約書の押印方法や印鑑の種類を解説しましたが、ご覧のように契約書への押印には非常に複雑なルールがあり、手間もかかります。このような契約業務を煩わしいと思っている方、時間を取られて困っている方にはぜひ、電子契約を試してみていただきたいです。
電子契約のメリットはただハンコを押さずに契約ができるようになるだけではありません。例えば、契約内容を変更する際の訂正印は電子契約だと一切不要。取引相手と打ち合わせをしたら、パソコンで当該箇所の文章をサクッと変えるだけで終了します。
どんなに契約書が長くても契印を押す必要はなく、もちろん捨印や止印などのほかの押印も必要ありません。また、収入印紙を貼る必要もないのでコスト削減にも貢献します。
現在ご覧いただいている「クラウドコントラクト」は月額3980円から使える操作がシンプルで簡単な電子契約サービスで、コストパフォーマンスと使い勝手を重視する中小企業や個人事業主のお客様を中心にご愛用いただいております。
2週間、完全無料でお試しできますので、ご興味がある方はぜひご利用ください。
格安&簡単な電子契約『クラウドコントラクト』を試してみませんか?
中小企業様や個人事業主様に最適な、格安で必要な機能がそろったシンプルな電子契約サービス『クラウドコントラクト』では、2週間無料トライアル(お試し利用)を実施しています。
タイムスタンプや電子署名といった必須機能はもちろん、相手への確認の手間を削減できる契約状況の確認機能などの便利な機能を備えつつも、直感的に使用できるシンプルなサービス。よって、印紙税や郵送代などのコストや作業時間を手軽に削減することが可能です。
また、カスタマーサポートも充実しており、電話やチャットでのお問い合わせも対応しておりますので、操作に不安がある方も安心してご利用いただけます。
弁護士監修の使える契約のノウハウを発信中!
電子契約の今を知る