インターネットを利用した商取引が一般化し、電子署名法など法の整備も進んだことで、電子契約が急速に広がっています。これから導入を検討している企業にとっては、従来との紙の契約との違いや法的な有効性、メリット・デメリットが気になるところでしょう。
この記事では、電子契約がこれまでの契約とどう違うのかを解説し、メリット10点とデメリット3点を紹介します。デメリットの解消法もぜひ参考にしてください。
電子契約とは?紙の契約書との違い
電子契約とは、インターネットなどの通信技術を利用して契約書の電子ファイルに対して「電子署名」や「タイムスタンプ」を記録して締結する契約のことです。従来の紙の契約と比較してみると、契約の証拠力は担保しつつ、圧倒的に作業効率が改善し、作業時間が短縮されることが特徴です。
電子契約は、紙の契約と比較すると大きく3つの点で違いがあります。比較しやすいように一覧表にまとめました。それぞれについてポイントを解説します。
紙の契約 | 電子契約 | ||
---|---|---|---|
形式 | 紙の契約書 | 契約書の電子データ(PDF) | |
証拠力 | 押印 | 印鑑・印影 | 電子署名(当事者型・立会人型) |
本人性の担保 | 印鑑証明 | 電子証明書・メール認証 | |
改ざんの防止 | 契印・割印 | タイムスタンプ | |
印紙 | 必要 | 不要 | |
事務 | 押印作業 | 印鑑のある場所で行う | どこでも可能 |
送付と受領 | 郵送あるいは持参 | インターネットで即時通信 | |
保管スペース | 保管庫など | サーバー |
契約の証拠力は電子契約も同等
電子契約で最も気になるのは、「紙の契約と同等の法的効力があるのか」という点でしょう。契約の法的効力が認められるには、契約の当事者が本人であることを証明する本人性と、契約に改ざんがないことを証明する真正性が必要です。
紙の契約書では、本人性を証明するために「印鑑の押印」と「印鑑証明」、契約書の改ざんを防止するために「契印・割印」を行います。電子契約書では、それに対応する手段として「電子署名」「電子証明書」「メール認証」「タイムスタンプ」が用いられます。これらの手段の法的効力については国が認めていますので、電子契約には紙の契約と同等の効力があるのです。
電子契約の仕組みについてさらに詳しく知りたい方は、次の記事もご参照ください。
電子契約では印紙が不要に
2つめの違いは、印紙税の扱いです。紙の契約では、契約の種類によって印紙税がかかりますが、電子契約では印紙税が一切かかりません。印紙税は「課税文書が対象」と法律で定められており、この場合の文書は紙を用いた書類を指すため、紙を用いない電子契約は対象とならないのです。
不動産売買契約など契約の種類によっては高額な印紙税がかかりますから、印紙税の点から電子契約のメリットを感じる企業も増えています。
電子契約と印紙税については、こちらの記事もご参照ください。
事務作業の効率化がはかれる
紙の契約と電子契約の違いは、事務作業の効率という点にも大きく現れます。紙の契約の場合は、紙の契約書と印鑑というモノが介在するため、人が動いたりモノを動かしたりする必要があります。一方、電子契約は電子的な手段を使うので、インターネットが使える環境であればどこでも作業が可能で、即時に送信することができます。
事務作業の効率化を図にすると、下記のようになります。工程が減るとともに、作業時間とコストが削減できることがわかります。
電子契約で業務改善・コスト削減
- クラウドコントラクト
- 従来の紙
契約合意・契約書作成
電子的な手段を使うことが、電子契約のさまざまなメリットにつながっています。メリットについては、次の項目で詳しく紹介します。同時にデメリットもあるので、気になる方は先の項目もチェックしてください。
電子契約の10のメリット
電子契約では、電子化したファイルとインターネットを利用することで、幅広いメリットが得られます。即時にやりとりできるスピード感や、業務の効率化、コスト削減が大きなメリットですが、電子契約サービスの機能を利用することでさらに多方面でメリットを受けることができます。ここでは、効果の大きいものから10のメリットを紹介します。
①契約締結がスピーディーになる
業種や会社の規模に関係なく共通するメリットは、「契約締結が早くなる」ことです。契約書を印刷・製本・郵送する従来のやり方では数日から数週間のリードタイムがあったのが、電子契約では早ければ数時間で契約締結が可能です。また、インターネット上でやりとりできるため、契約期日に間に合わせるため契約書を持参するという事態もなくなります。
②契約業務を大幅に削減できる
上の図のように、電子契約では、書面の契約と比べて事務作業の工数を約55%も削減できます。例えば書面の契約で必要だった「印刷」「製本」「収入印紙の貼付」「書類保管」などの事務作業は、電子契約であれば一切不要。印刷や郵送関連の作業を丸ごと効率化することが可能です。
電子契約サービスに付随するテンプレート機能を利用すれば、契約書の作成も効率化できます。一括送信機能などインターネットならではの機能で、さらなる効率化も可能です。
③作業コストが削減できる
書面の契約に必須の「印刷」「製本」「郵送」の作業がなくなることで、付随する紙・印刷・郵送代などのコストも丸ごと削減できます。作業を行っていた人の人件費も削減でき、より重要な仕事に人を配置することが可能になります。
④印紙コストが削減できる
前述したとおり、電子契約書は印紙税の課税対象とならないため、印紙代が不要になります。印紙の貼付作業や管理もなくなり、ここでも人件費の削減効果があります。印紙が必要な契約を扱う企業にとっては、大きなコストメリットが期待できます。
⑤書類の管理がスムーズになる
電子化された契約書のファイルは、検索機能を使って簡単に探すことが可能です。紙の契約書の場合、ファイリングして保管することが一般的ですが、ファイリングの手間がかかる上に探すときもファイルを確認する手間がありました。その点、電子契約では検索で即時に取り出すことができるのです。
多くの電子契約サービスでは、電子帳簿保存法に対応した検索システムを用意し、クラウド上で契約書を保管してくれますので、書類の管理は格段に楽になります。
⑥書類の保管スペースが不要になる
紙の契約書はファイルで保管することが多いため、保管スペースが必要です。契約書の中には10年間保管しなければいけない書類もあり、保管スペースの負担は大きいと言えます。その点、電子契約では締結した書類をクラウド上で保管するので、書類の保管スペースが必要ありません。
なお、クラウドコントラクトでは契約書をPDFファイルでダウンロードする機能をご提供しており、パソコン内や印刷して紙媒体で保管することにも対応しておりますので、オンライン以外での保管をご希望の方もご利用いただけます。
⑦契約書の改ざんリスクを回避できる
意外に感じるかもしれませんが、電子契約を導入することで契約書の改ざんや捏造を防止することができます。電子ファイルは複製が容易であるため、より強固な防止対策が取られているからです。
電子契約サービスでは、特殊な暗号で情報を保護しており、本人が持つパスワードでしかアクセスができません。また、データを書き換えるなど情報の変更(改ざん)を行うと、タイムスタンプで履歴が残る仕様になっているので、不正行為が行えません。パスワードを適切に管理することで、紙の契約書よりも安全に契約書を保管できるのです。
⑧契約更新の管理が容易になる
契約書を電子契約サービスで管理することで、契約更新の時期にアラームを設定することができます。設定した日時にメールが配信されるなど、契約の有効期限をお知らせしてくれるので、契約更新の対応漏れを防ぐことができます。
また、電子契約サービスでは、契約締結時のステータス(進行状況)を表示する機能を提供するところもあり、契約にまつわる“うっかり忘れ”を回避しやすくなっています。
⑨リモートワークへの対応がしやすい
これまでの紙の契約ではハンコを押印するために出社する必要がありましたが、電子契約ではハンコは不要で、インターネット環境があればどこでも電子署名ができます。オンラインで完結するので、リモートワークにも簡単に対応できます。
⑩取締役会議事録にも使える
電子契約サービスの機能を使えば、契約書に限らず、取締役会議事録といった複数の承認が必要な重要書類の管理にも使えます。押印が要らない、即時送信できてリードタイムが短い、リモートで対応できるといった電子契約のメリットが、社内の承認フローにも便利に活用されています。
電子契約の3つのデメリット
電子契約のデメリットは、仕組み上の問題と法的な制約から大きく3つあります。契約に関する業務フローの変更も必要ですが、これはシステム導入時に共通する課題なので、電子契約のデメリットとしませんでした。
サイバー攻撃のリスクがある
電子契約はオンライン上で行うので、サイバー攻撃を受ける可能性がゼロではありません。電子契約サービスは、締結した書類をまとめて保管する中央集権型の設計になっている場合が多いため、万が一セキュリティが突破されたときに情報漏洩が避けられません。そのリスクを回避するため、各社でセキュリティ対策を行っており、サイバー攻撃の被害にあう危険性はかなり低くなっています。
取引先の了承と協力が必要
契約は、相手があって成立するもの。取引先にも電子契約を了承してもらう必要があります。立会人型電子署名は相手側がシステム導入をしていなくても契約ができますが、電子契約に不信があったり、ITリテラシーが低い場合は難色を示されるかもしれません。
事務作業の効率化といったメリットが相手にもある点を説明し、加えて安全性に関しての不安を取り除く説明が必要です。どうしても了承が得られない場合は、書面の契約書と併用して電子契約を利用することになります。契約作業を効率化するためにも、丁寧な説明で理解と協力を得たいところです。
電子契約できない書類がある
2001年に施行された電子署名法を皮切りに、IT書面一括法、e-文書法、電子帳簿保存法、デジタル社会形成整備法など法整備が進み、現在では契約書のほとんどが電子契約で締結可能です。長らく電子化が認められてこなかった不動産売買・賃貸借等に関する契約書や重要事項説明書も、2022年5月18日以降は電子契約が可能となりました。
ただし、下記の契約書については、書面化が必須とされ電子契約ができません。導入前に確認しておきましょう。
- 事業用定期借地契約
- 企業担保権の設定又は変更を目的とする契約
- 任意後見契約書
デメリットを解消するサービス選びのポイント
電子契約のデメリットを紹介しましたが、デメリットは電子契約サービスの選び方である程度、解消することができます。ここでは、サービスを選ぶときのポイントを紹介します。
サイバー攻撃対策のチェックポイント
各社のセキュリティを確認するのはもちろんですが、情報が一箇所に保管されているか、分散して保管されているかも確認しましょう。一箇所に情報が集まっていると、サイバー攻撃でセキュリティが突破された場合、すべての情報が漏洩してしまいます。分散して情報を保護していれば、突破するセキュリティが増えるので安全性を高めることができます。
取引先から了承をもらいやすくするポイント
相手方の電子契約への抵抗感をなくすためには、セキュリティに関する不安や法律の面での心配を取り除くことが重要です。しかし専門的な質問にはなかなか答えにくいと思いますので、相手方への説明の代行か、電話サポートを用意している会社のサービスを導入しましょう。提供会社が直接説明することで、電子契約に対する抵抗感の軽減に繋がります。
取引先への協力を得やすくするポイント
電子契約の協力を得るには、操作方法がどれだけ分かりやすいかも大切なポイントです。一目見て感覚的に操作できるシンプルなサービスであれば、取引先の抵抗感も低くなり、円滑に契約を進めることができます。電子契約サービスを選ぶときは、操作面での使いやすさ・分かりやすさも重視しましょう。
電子契約の導入にあたって発生し得る問題点と対策
ここでは、電子契約の導入に失敗しないために、導入の際に発生し得る2つの問題点とその対策をご紹介します。もし自社で導入する際は、これらの問題点に悩まされないためにも、対策を事前に把握してスムーズに電子契約を導入しましょう。
費用対効果が判断できない時はお試し利用で確認を!
「契約締結に経費がかなりかかっている」「事務作業に時間がかかり過ぎている」など問題を抱えており、明らかに導入メリットがある企業様は即刻導入して利用すべきと言えます。
しかし、印紙代などの出費が気にならない程度であったり、契約締結数が少なかったりする場合、導入の効果を十分得られるか判断が難しいと思います。
実際、コストの試算はざっくりとはできますが、「契約の流れがどのように変わるか」「使い勝手はどうか」といったポイントは導入するまで分かりません。また、「せっかく年間契約したのに、定着しなかった…」となると予算が無駄になってしまいます。
このように電子契約のメリットがきちんと得られるか微妙な場合は、各電子契約サービスが提供している無料トライアル(お試し利用)を利用してみましょう。また、無料トライアルの期間や制限された状態の機能だけで判断ができなかった場合は、手頃な値段のサービスを1ヶ月契約して様子を見るという方法もあります。
2週間程度利用してみると大体の使い勝手をつかむことができますので、効果が見えないことで導入すべきか迷っている場合は積極的に無料トライアルを活用していきましょう。
当サイト「クラウドコントラクト」でも無料トライアルを実施しておりますので、ご興味がある方はぜひご利用ください。
電子契約への過渡期は操作性の良いサービス選びで最小限に!
電子契約を導入しても、すぐに全ての契約書を電子化するのは難しいです。取引先に操作方法を説明したうえでどの契約書から電子化するのかを協議し、段階的に電子契約に移行する、書面での契約と電子契約を併用する過渡期が続くことになります。
また、取引先から電子化への協力が得られないと、書面での契約から切り替えることができず、並行利用する期間が長引くことも考えられます。
この過渡期がどのくらい続くかはケースバイケースですが、その一因となるのが利用する電子契約サービスの操作性です(これは、電子契約では自社と取引先の双方が電子契約サービスを操作することになるため)。
操作が簡単なサービスであるほど取引先への説明も簡単になり、導入と定着のスピードも上がります。また、操作しやすいサービスを選ぶことで取引先の抵抗感を抑えることもできます(電子契約を拒否する理由には、変化に対する面倒くさいという感情のほかに、自社で使えるかわからないという不安もあるため)。
以上の理由から、各電子契約サービスが実施している無料トライアル(お試し利用)を行って使いやすさを比較検討し、シンプルで操作が簡単なサービスを選ぶのが電子契約と書面による契約を並行利用する過渡期を最小限に抑えるポイントとなります。
【まとめ】電子契約は長い目で見るとメリットばかり!
電子契約のメリットとデメリットについてご紹介しましたが、長期的に見るとメリットの方が圧倒的に大きいです。もちろん導入にあたって取引先に同意を得る必要があったり、社員の教育にコストがかかったりするので導入のハードルはそれなりに高いですが、一度軌道に乗ってしまえば電子契約のメリットを受け続けることができます。
多くの電子契約サービスが無料トライアルを実施していますので、少しでも興味があれば実際に電子契約サービスを使ってみてメリットを体感してみることをおすすめします。
格安&簡単な電子契約『クラウドコントラクト』を試してみませんか?
中小企業様や個人事業主様に最適な、格安で必要な機能がそろったシンプルな電子契約サービス『クラウドコントラクト』では、2週間無料トライアル(お試し利用)を実施しています。
タイムスタンプや電子署名といった必須機能はもちろん、相手への確認の手間を削減できる契約状況の確認機能などの便利な機能を備えつつも、直感的に使用できるシンプルなサービス。よって、印紙税や郵送代などのコストや作業時間を手軽に削減することが可能です。
また、カスタマーサポートも充実しており、電話やチャットでのお問い合わせも対応しておりますので、操作に不安がある方も安心してご利用いただけます。
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