秘密保持契約(機密保持契約)とはどのようなものなのか、契約の締結に使用する秘密保持契約書(NDA)の作成方法と、どのような点に注意すべきかをわかりやすく解説していきます。
また、基本取引契約書や雇用契約書など他の契約書と同様に、電子契約にしたい場合の対処法をお伝えします。
【基礎知識】秘密保持契約(NDA)とは
秘密保持契約とは、相手方から開示される情報について、目的外の利用を禁止したり、第三者に開示しない、そして情報の漏洩を防止するように適切な管理を義務付ける契約のことをいいます。
秘密保持契約書は、この秘密保持契約を結んだことを証明するために作成される書面のことです。
英語で「Non-disclosure agreement」と呼ばれ、その頭文字であるNDAと省略されます。
このNDAという呼び方が、秘密保持契約および秘密保持契約書のことを指す用語としてよく利用されます。
秘密保持契約(NDA)が必要な理由
秘密保持契約はどうして必要なのでしょうか。
契約にあたっては相手に損害を与えないようにするのは当然ですので、秘密保持契約を結ばなくても契約の相手方から預かった情報を漏洩しない義務はあるといえます。
しかし、何も規定しなければ、万が一情報の漏洩があった場合に、どのような義務があったのか、漏洩があった情報を保護する必要があったのか、どのような損害が生じたといえるのかなどを争うことになります。
また、本契約を結ぶための検討材料として秘密にしたい情報を提供する必要もあり、このような情報開示も適切に保護しなければなりません。
加えて、契約が終了した後の秘密情報の保護も必要です。
以上のような理由から、秘密情報の内容や当事者の義務などを明確にする観点から秘密保持契約を結ぶことは、重要な取引において必要とされています。
秘密保持契約書と秘密保持誓約書の違い
秘密保持契約書と同様の言葉として、秘密保持誓約書というものがあります。
秘密保持誓約書とは、業務上知り得た情報について、漏洩・目的外利用をしないことを従業員に誓約させる旨の書面をいいます。
秘密保持誓約書は従業員が企業に就職する際に企業から提出を求められるもので、会社が自社の従業員に対して秘密保持をするように義務づけることを目的としています。
内容としては秘密保持契約書と同じく、秘密情報の内容や従業員の義務などを明確にする観点で作成されます。
退職時に、退職後にも秘密保持義務があることを明確にするために、退職時秘密保持誓約書を追加で提出してもらうこともあります。
以上のように、秘密保持契約書は契約の当事者が企業対企業(個人事業主の場合もある)の間で取り交わすのに対して、秘密保持誓約書は会社と従業員との間で取り交わすものという違いがあります。
秘密保持契約書(NDA)を締結する具体的な場面
秘密保持契約が必要なケースとしては次のようなものがあります。
1.業務委託・外注をする場合
自社の業務を外部に委託する・外注するような場合に、自社の秘密情報や顧客情報を取り扱う可能性があります。
例えば、コールセンターを外注するような場合、外注先の会社は自社にかかってきた電話の取次をするにあたり、顧客の氏名・性別・住所・電話番号・自社の商品の購入履歴やサービスの利用状況などを取り扱います。
そのため、秘密保持契約は欠かせません。
2.業務提携
会社が業務提携を行う際に、それぞれの会社の秘密情報や顧客情報を相手と共有する可能性があります。
例えば、電子機器を製造している会社同士が業務提携をすることで、それぞれの会社の技術情報を共同で取り扱うことがあります。
このような場合にも秘密保持契約は欠かせません。
3.新規取引の検討
外部の会社と新たに取引を行う際に、それぞれの会社の秘密情報を提供する可能性は高いです。
たとえば、新たな取引をする際に、与信管理を行うために、決算書などの書類を提供してもらう可能性があります。
おおまかな決算書は公告がされますが、公告されていない書類を提供してもらう際には、秘密保持契約は欠かせません。
4.M&A
M&Aの検討をする際には、それぞれの会社の決算などを始めとする情報は必ず提供します。
例えば、相手の会社を買い取って自社の子会社とする交渉に入るときには、会社の買取金額を検討するために、相手の会社の決算書はもちろん、その会社の取引先など表に出ない情報は必ず開示して売買を検討することになります。
そのため、必ず秘密保持契約を結ぶことになります。
秘密保持契約で保護対象にできる情報とできない情報
秘密保持契約で保護される情報と、保護の対象にならない情報は次の通りです。
秘密保持契約で保護される対象にならない情報
先に、秘密保持契約で保護される対象にならない情報を確認しましょう。
秘密保持契約で保護される情報には次のようなものがあります。
- 情報開示前にすでに別のルートで保有していてた情報
- 情報開示前からすでに公に知られていた情報
- 情報開示後に、第三者から正当に入手したもの(その情報自体も秘密保持義務を負わないもの)
- 情報開示後に、過失なく公に知られた情報
これらの情報については、秘密保持契約では保護の対象になりません。
秘密保持契約の中では保護の対象にならないことを明示するのが通常です。
秘密保持契約で保護される対象になる情報
上記の秘密保持契約で保護される情報以外のものは、基本的には秘密保持情報で保護の対象にすることが可能です。
秘密保持契約書(NDA)に記載すべき条項&規定一覧
秘密保持契約書に記載する条項・規定にはどのような条項があるか、その中身を経済産業省が提供している秘密保持契約書の雛形に沿ってお伝えします。
また、併せて経済産業省が提供している秘密保持契約書の雛形には記載がないものの、よく記載される事項や、その他の知っておくべき項目についても併せて確認していきます。
秘密保持契約書に記載する事項・規定
経済産業省が提供している雛形では、次のような事項を記載しています。
1.契約書の表題(タイトル)
表題とは契約書のタイトルです。
締結する契約書の内容がわかるものを設定することが一般的なので、経済産業省が提供している雛形と同様に「秘密保持契約書」と記載すれば問題ありません。
2.契約書の前文(呼称の定義など)
具体的な条項に入る前に、契約の当事者や契約の概要を示す部分のことを「前文」と呼んでいます。
契約書の条項中、当事者を示すものとして「甲」「乙」(A・B などの場合もある)という略称を利用します。
ほかにも、どちらが甲なのか乙なのかも前文で記載して特定します。
経済産業省が提供している契約書の雛形では以下のように規定されています。
●●株式会社(以下「甲」という。)及び●●株式会社(以下「乙」という。)は、相互に授受される秘密情報の取り扱いについて、次のとおり秘密保持契約書(以下「本契約」という。)を締結した。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
当事者が複数いる場合には、「甲」「乙」「丙」「丁」「戊」と定義しましょう。
3.契約の目的
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形の第1条として、契約の目的として、この契約がどのような目的をもってなされるものかを記載するのが一般的です。
この条項があるからといって、特に直接権利・義務を生じるわけではありませんが、契約において解釈が必要になる際の指針に利用されます。
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形では以下のように規定されています。
甲及び乙は、〇〇の可能性の検討を目的として(以下「本目的」という。)、それぞれ自らの裁量によりに必要と認められる範囲で、相手方に対し、秘密情報(第2条第1項に定義する。)を開示する。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
○○のところは、契約内容に応じて適切な内容を記載します。
4.定義(秘密情報の定義)
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形の第2条では、契約書内における定義を明確にする条文を規定します。
ここで特に重要なのは、「秘密情報」とは何かを規定するものです。
経済産業省が提供している秘密保持契約書では第1項で
1「秘密情報」とは、甲又は乙が相手方に対し、①秘密である旨を指定して書面又は電磁的方法により開示する情報、②口頭、実演、上映、投影、その他書面又は電磁的情報を提供しない方法で開示する情報であって、当該秘密情報を開示するに際し、秘密である旨を相手方に告知し、かつ、開示後30日以内に、当該情報の内容を取りまとめて秘密である旨を書面により相手方に通知した情報、及び、③交付するサンプル等の有体物であって、交付の際に秘密である旨を書面で通知したものをいう。
ただし、以下の各号のいずれかに該当するものを除く。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
- 開示される以前に、相手方が知得していたもの
- 開示された時に、すでに公知であったもの
- 開示した以降に、相手方の帰責事由なく、公知となったもの
- 相手方が、正当な権利を有する第三者(相手方以外のすべての者をいう。
以下も同様。)から守秘義務を負うことなく合法的に取得したもの
と規定しています。
この契約書では、「ただし」以下で例外に該当するものを「秘密情報」としないという前提で契約をします。
一方で、他の契約書の雛形の中では、例外に該当するものについて秘密保持契約の対象外の情報として別に条項を設けることがあります。
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形では他にも
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
- 「開示者」とは、秘密情報を相手方に開示する当事者をいう。
- 「受領者」とは、秘密情報を相手方から開示された当事者をいう。
- 「知的財産権」とは、特許権、特許を受ける権利、実用新案権、実用新案登録を受ける権利、回路配置権、回路配置権の設定の登録を受ける権利、意匠権、意匠登録を受ける権利、育成者権、著作権(著作権法第27条及び第28条に規定する権利を含むが、これらに限定されない。)及び商標権、並びに、これらのいずれかに相当する日本国外の法令に基づく権利をいう。
という3つの定義をしています。
業務の中と特許権・著作権などの知的財産権が発生する場合には、知的財産権とは何をいうかの規定をしておくのが望ましいといえます。
5.秘密保持義務
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形の第3条では、秘密保持義務の内容を定めています。
秘密情報の開示を受領した人は、どのような義務があるのかを規定することになります。
経済産業省が提供している契約書の雛形では以下のように規定されています。
第3条(秘密保持義務)出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
- 受領者は、本目的のために開示者から開示された秘密情報、並びに、開示者と本目的に係る検討、交渉を行っている事実及び本契約の存在を、厳に秘密として保持し、開示者による事前の書面承諾を得ない限り、第三者に対して、開示又は漏えいしてはならず、また、開示者による事前の書面承諾を得ない限り、秘密情報を本目的以外のために用いてはならない。
- 受領者は、自己の役員又は従業員のうち本目的のために秘密情報を知る必要がある者に対し、本目的のために必要な範囲内でのみ、秘密情報を開示することができる。
- 受領者は、開示者による事前の書面承諾を得た場合に限り、自己の[子会社/親会社/関係会社]のうち本目的のために秘密情報を知る必要があるものに対し、本目的のために必要な範囲内でのみ、秘密情報を開示することができる。
- 第2項の規定に基づき、又は、開示者による事前の書面の承諾を得て、秘密情報を開示した甲又は乙は、当該情報を開示した第三者をして本契約に定められた自己の義務と同等の義務を遵守させるものとし、かつ、当該第三者の行為について全責任を負う。
- 国又は地方公共団体の機関から秘密情報の開示を命じられた場合、受領者は、これに応じるために当該機関に対して必要最小限の範囲内において、秘密情報を開示することができる。
この場合、開示者に対し、当該命令を受けた旨を、合理的に可能な範囲で、速やかに通知する。
1項では、義務についての内容を具体的に規定しています。
目的外利用については、この契約書のように規定することもありますが、独立して項目を設けて規定することもあります。
2項では、秘密情報の取り扱いをする人の範囲を規定しています。
この規定があることによって、会社の中でも特定の人のみに開示が許され、業務に関係のない人への開示が禁止されます。
3項では、受領者が親会社・小会社・関係会社などへの情報開示を、開示者の書面による同意のもとにできることが規定されています。
秘密情報の受領者が、業務の一部を孫請けに出すことが考えられ、これに伴って秘密情報を会社外に開示する必要性がある場合に、厳格な運用をしながらも柔軟に対応するために、このような規定を置いておくことが考えられます。
この場合4項にあるように、情報を開示した第三者に義務を守らせ、守らなかった場合には責任を負うことが併せて規定します。
5項では、国又は地方公共団体から秘密情報の開示を命じられた場合の開示について規定しています。
犯罪捜査等などで協力すべき場合には開示に応じなければならないのですが、開示があったことを相手方に通知する義務を規定します。
6.知的財産権の帰属
例えば、新素材の共同開発をするような場合には、開発した新素材について特許権を取得することになります。
また、商品を作る場合には、商品については商標登録をすることもあります。
このような場合の特許権や商標権などの帰属についてどのような取り扱うか規定します。
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形ではまず1項で
第4条(知的財産権)
1 甲及び乙はいずれも、相手方の秘密情報に依拠して、発明、考案、著作物その他の知的財産権の目的となるもの(以下「発明等」と総称する。)を得た場合には、相手方に対し速やかに通知し、また、当該発明等に関する知的財産権の帰属及び取扱いを別途甲乙間で協議のうえ決定するものとする。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
としています。
この契約では、知的財産権については柔軟に検討するようですが、例えば外部委託をする際に知的財産権は自社のものとするような場合には「甲に帰属するものとする」などの文言を記載することになります。
また、2項では例外の規定を次のように置いています。
2次の各号のいずれかに該当する発明等に係る知的財産権は、その発明等をなした当事者に単独で帰属するものとする。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
- 各当事者が本契約締結日前から保有するもの。
- 各当事者が、本目的を遂行する過程で、相手方から提供された秘密情報に依拠せずに独自に創出又は取得したもの。
この規定は、契約締結日前から保有している知的財産権や、秘密情報の提供なくして獲得した知的財産権について権利を主張されることを防ぐ目的があります。
7.確認事項(曖昧な契約内容の発生を防ぐ)
契約の中で曖昧になりそうな点についての合意がされた場合に、確認事項などと記載してまとめて条項にすることがあります。
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形ではまず1項で
第5条(確認事項)と規定しています。
1 開示者から受領者に開示された秘密情報に係る一切の権利及び利益は、開示者に帰属するものとし、受領者に対する秘密情報の開示により、知的財産権その他一切の権利及び利益が受領者に譲渡されるものではなく、また、実施許諾、使用許諾その他いかなる権限も受領者に与えられるものではない。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
これは、秘密情報の開示前に発生した権利・利益は開示者に帰属すること、秘密保持契約によって譲渡されるものではないことを確認しています。
次に2項で
2 甲及び乙は、本契約が、本目的を遂行するに際して当事者間で開示される秘密情報の取扱いにつき定めるものであって、当事者間における物品の売買、役務の提供若しくはこれらの予約その他いかなる取引又は本契約に定めのない事項を約定するものではないことを確認する。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
と規定しています。
これは、秘密保持契約が成立したからといって、物品の売買やサービス(役務)を提供することを約定するわけではないことの確認をした旨を規定しています。
次に3項では、
3 甲及び乙はいずれも、自己を開示者とする秘密情報について、正確性、有効性、安全性、特定の目的への適合性又は知的財産権の非侵害その他いかなる事項についても何ら責任を負わない。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
と規定しています。
あくまで秘密保持契約では、情報を開示してもらって外部に漏洩しないことを約束するもので、これによって正確性・有効性・安全性などの事項について責任を負うことまで約束するわけではないことを確認したことによります。
4項では、
4 甲及び乙は、本契約により、いかなる意味においても相手方に対する秘密情報の開示義務を負うものではないことを確認する。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
と規定します。
秘密情報の開示については当事者が任意に行うものです。
秘密保持契約はあくまで開示された情報について権利・義務を定めるもので、情報開示をしなければならないという義務を規定するものではないことを確認したものになります。
8.秘密情報の返還・破棄
契約が終了した場合には、相手に提供した秘密情報については、破棄・返還をしてもらう必要があります。
そのため、秘密情報の返還・破棄について規定をしておきます。
経済産業省が提供している契約書の雛形では以下のように規定されています。
第6条(秘密情報の返還・廃棄) 本契約の終了後直ちに、又は、開示者から要求があった場合、受領者は、開示者から開示を受けた秘密情報(複製・複写等を含む)を、開示者の指示に従い返還し、又は廃棄する。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
9.損害賠償義務
秘密保持契約に背いて情報を漏洩したなどで損害を与えた場合には、当然に損害賠償義務を負います。
ただ、損害賠償は請求をする方が証明をするのが基本となるので、賠償すべき損害の内容について規定します。
経済産業省が提供している契約書の雛形では以下のように規定されています。
第7条(損害賠償義務) 甲及び乙は、本契約に違反して、相手方に損害を与えた場合には、相手方に対し、損害(相手方の弁護士費用を含む。)の賠償をしなければならない。
出展:
秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
ここでのポイントは、弁護士費用の賠償義務です。
秘密保持契約違反での損害賠償は、秘密保持契約違反行為があったかどうか、いくらの損害が発生したのかなどの難しい立証が必要です。
また、多数の契約者情報を一斉に流出したような場合には、多額の損害賠償をする必要があり、弁護士に依頼する費用が高額となることがあります。
何も規定がない状態で弁護士に依頼して、弁護士費用を損害として請求する場合には、全額の請求が認められないようなケースもあります。
そのため、弁護士費用の支払い義務を明記しているのがこの契約書記載例の特徴です。
10.差止め
秘密保持契約に違反して、秘密情報を漏洩していたり、目的外利用をしているような場合の差止めについて規定します。
経済産業省が提供している契約書の雛形では以下のように規定されています。
第8条(差止め) 甲及び乙は、相手方が、本契約に違反し、又は違反するおそれがある場合には、その差止め、又はその差止めに係る仮の地位を定める仮処分を申し立てることができるものとする。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
この契約書では、明確な秘密保持契約違反があるという差し止めを行うのが当然であるケースに加えて、秘密保持契約に違反するおそれがある場合にも差止を求めることができるようにしています。
有効期限
契約の有効期間についての定めをします。
例えば、業務提携の契約期間があり、その契約期間は併せて秘密保持契約を結んでいる場合があります。
この場合に、業務提携の契約が終了したからといって、保有している秘密情報を漏洩・自由に利用することができるとするのは当然ながら妥当ではありません。
そのため、いつまで秘密保持義務があるのかを明確にするために規定します。
経済産業省が提供している契約書の雛形では以下のように規定されています。
第9条(有効期間)出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
- 本契約は、本契約締結日から〇年間、有効に存続する。
- 前項の規定にかかわらず、本契約の終了後においても、本契約の有効期間中に開示等された秘密情報については、本契約の終了日から〇〇年間、本契約の規定(本条第1項を除く。)が有効に適用されるものとする。
特に、契約終了後にも秘密保持義務が存続することについて記載することを確認しましょう。
12.紛争の解決・専属的合意管轄
紛争が生じたときの処理について記載します。
紛争に関する規定では、経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形の
第10条(紛争の解決) 1 本契約に定めのない事項、疑義が生じた場合、又は本契約に関連する紛争が生じた場合には、甲及び乙は、誠意をもって協議の上、円滑に解決を図るものとする。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
こちらの規定のように、一般的な努力義務を規定することはもちろんなのですが、
2 本契約に関する知的財産権についての紛争については、[東京・大阪]地方裁判所を第一審の専属的合意管轄裁判所とする。
出展:秘密保持契約書ひな形(経済産業省)
という2項の規定のように、紛争が生じたときの裁判所の管轄についての合意には注意をしましょう。
昨今ではテレビ会議システムの利用などもすすんでいますが、遠隔地の裁判所への提起は非常に負担が大きいです。
13.契約書の後書
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形の各条項は以上なのですが、契約書を作成する場合にはどのような場合でも次のような後書を記載します。
本契約締結の証として、本書二通作成し、甲乙記名押印の上、各自一通を保有する。
●●年●月●日
甲 ●●株式会社
(住所)
(代表者名)
乙 ●●株式会社
(住所)
(代表者名)
契約書作成における通例になっているので、そのまま利用しましょう。
秘密保持契約書でよく規定される項目
経済産業省の提供している秘密保持契約書の雛形には規定されなかったものの、その他の雛形などでは規定されていることが多いものとしては次のようなものがあります。
14.秘密情報の複製
秘密情報を複製することが多い場合には、秘密情報の複製について規定します。
秘密情報をコピーしたものも、秘密情報が記載されているわけですから、保護の対象にしなければなりません。
当然のことなので、経済産業省・知的財産取引に関するガイドラインで公開されている秘密保持契書には記載がありませんが、独立した項目を設けたり、秘密保持義務の内容として記載することもあります。
受領者は、開示者の事前の書面による承諾を得なければ、秘密情報の全部又は一部を複製又は複写することはできない。
この項目は独立して条項を設けるほか、情報開示義務違反の一項目にする、秘密情報管理義務の項目にするなど、規定を設ける方法は複数あります。
反社会的勢力の排除
反社会的勢力の排除についての規定をすることがあります。
反社会的勢力とのつながりが指摘されることは、会社の信用やブランド価値が低下するなどのリスクに繋がります(このようなリスクのことをレピュテーションリスクといいます)。
そのため、反社会的勢力の排除の表明と保証・万が一反社会的勢力である場合や、反社会的勢力とのつながりがある場合に、ただちに契約を解除できることを規定します。
規定のポイントは、
- 反社会勢力の定義
- 契約解除に該当する行為
- 契約解除による損害賠償義務を負わない
以上の3点です。
1甲および乙は、相手方に対して、本契約が締結された日および将来にわたり、自己または自己の役員および従業員が次の各号に該当する者または団体(以下、「反社会的勢力」という。
)に該当しないことを表明し、保証する。
暴力団、暴力団員、暴力団準構成員、暴力団関係企業、総会屋等、政治活動、社会運動等標ぼうゴロ、特殊知能暴力集団等、反社会的勢力共生者
2甲および乙は、合理的理由に基づき相手方が次の各号に該当すると判断した場合、何らの催告なしに本契約を解除することができる。
- (ア)反社会的勢力である場合、または反社会的勢力であった場合
- (イ)自らまたは第三者を利用して、相手方に対して以下の行為を行った場合
- (ウ)違法なあるいは相当性を欠く不当な要求
- (エ)有形力の行使に限定しない示威行為などを含む暴力行為
- (オ)情報誌の購買など執拗に取引を強要する行為
- (カ)被害者団体など属性の偽装による相手方への要求行為
- (キ)その他「暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律」で禁止されている行為
- (ク)相手方に対して、自身が反社会的勢力である、または、関係者である旨を伝えるなどした場合
3甲および乙は、前項により本契約を解除したことにより相手方に損害が生じたとしても、一切の損害賠償を負わない。
秘密保持契約書(NDA)を電子契約にするには
ここでは、秘密保持契約を電子契約にするメリットや、電子契約サービスの導入のポイントをお伝えします。「秘密保持契約書(NDA)を締結する具体的な場面」でお伝えしたように、秘密保持契約は、取引基本契約や業務委託契約、雇用契約などと同時に行われることが多い契約です。他の契約書とともに秘密保持契約も電子化することで、業務の効率化がはかれます。
秘密保持契約書(NDA)を電子化するメリット
秘密保持契約書を電子化するメリットは、大きく2つあります。
契約業務が効率化され、スピーディーに締結できる
1つめのメリットは、契約がスピーディーに締結できることです。秘密保持契約は、契約相手との間で「秘密情報の定義」や「秘密保持義務」について協議し、合意を得たうえで契約書を作成します。契約締結までに何度もやりとりすることも多いため、オンラインで完結できる電子契約を使うことは、業務の効率化につながります。
契約書管理がしやすく、検索で探し出せる
秘密保持契約は、前述のとおり取引基本契約や業務委託契約、雇用契約などと同時に交わされることが多い契約です。複数ある契約書を電子化して保管することで、契約書の管理がしやすくなるメリットがあります。
「電子帳簿保存法」に準拠した電子契約サービスを導入すれば、クラウドサーバーに保管すすることで保管スペースが不要となり、また検索機能で簡単に探し出すことが可能です。
電子契約のメリットについては、こちらの記事もご参照ください。
電子契約サービスを導入するときのポイント
秘密保持契約書を電子契約にする場合は、電子契約サービスを導入するのがおすすめです。電子契約に必要な要件を満たしているサービスを選べば、安全で効率的に契約業務を行えます。ここでは、電子契約サービスを選ぶときのポイントを3つお伝えします。
電子署名、タイムスタンプの機能があるか
電子契約は法律で定められた要件を満たす必要がありますが、要件の中でも重要なのが「電子署名」と「タイムスタンプ」です。「電子署名」は契約者の本人性や契約の合意を証明するもので、「タイムスタンプ」は契約書の作成や送受信の日時を証明するものです。この2つの機能が使えるかを確認しましょう。
電子契約サービスによっては、電子署名やタイムスタンプのどちらかが従量課金になっているなど、なんらかの制限があることもあります。電子署名もタイムスタンプも標準装備になっている、できるだけわかりやすいサービスがおすすめです。
契約相手が導入しやすいか
契約相手にとって導入しやすいサービスかも重要です。特に雇用契約など契約相手が個人の場合は、できるだけ相手に負担がかからないサービスがよいでしょう。電子契約には、大きく分けて「本人型」と「立会人型」の2つのタイプがあります。立会人型サービスは、契約相手はアカウントをとる必要がなく、メールのやりとりで契約締結できます。
「電子帳簿保存法」に準拠しているか
秘密保持契約書は、「電子帳簿保存法」に定められた「国税関係書類」には該当しませんが、同時に交わされることの多い取引基本契約書や業務委託契約書とともに管理したい場合は、「電子帳簿保存法」に対応したサービスを選ぶことをおすすめします。具体的には、「タイムスタンプは付与されるのか?」「取引年月日・契約書名・取引金額で検索できるのか?」の2点を確認してください。
電子帳簿保存法については、こちらの記事もご参照ください。
【まとめ】秘密保持契約書(NDA)作成のタスク一覧
秘密保持契約書に必要な条項リスト
全契約書共通の必要な条項
一部、重複している箇所がありますが、どのような契約書を作成する場合であっても共通して設けられる条項をご紹介します。
なお、各条項の解説などは、契約書全体の作り方の解説とともに以下の記事で行っています。
- 表題(タイトル)をつける
- 前文をつける
- 契約内容を記載する
- 契約期間を定める条項を作る
- 損害賠償について記載する
- 契約譲渡の禁止について記載する
- 秘密保持について記載する
- 契約解除事由について定める
- 管轄合意(訴訟で使用する裁判所)について定める
- 完全合意の条文を記載する
- 準拠法を定める
- 分離可能性について記載する
- 通知条項(相手への連絡を必須とする事由)を記載する
- 後文をつける
- 日付欄を作成する
- 署名・押印欄を設ける
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