本記事では、電子契約や領収書・請求書の電子化を含む、電子取引に関するデータの保存方法について解説します。2022年1月に電子帳簿保存法が改正され、従来の保存方法では準拠できません。またamazonや楽天で備品を購入した際の、請求書・領収書も電子保存が必要です。
※改正前の法律の内容に興味がない方は、「改正の内容」の章まで飛ばしていただいてかまいません。
電子帳簿保存法とは?
そもそも電子帳簿保存法とは、どのような法律かご存じでしょうか?
第一条 この法律は、情報化社会に対応し、国税の納税義務の適正な履行を確保しつつ納税者等の国税関係帳簿書類の保存に係る負担を軽減する等のため、電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等について、所得税法(昭和四十年法律第三十三号)、法人税法(昭和四十年法律第三十四号)その他の国税に関する法律の特例を定めるものとする。(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)
参考:電子帳簿保存法
条文は複雑ですが、要は『一定の要件さえ満たせば、紙での保存が義務付けられている書類を電子保存してもOK!』という法律が電子帳簿保存法です。この法律が2022年1月から改正されました。この記事では、この法改正によって事業者側が行う必要がある対策を解説していきます。
2022年度の電子帳簿保存法改正の内容
この章では電子帳簿保存法のうち、改正された5つの要件について詳細にご紹介します。
1.電子データの電子保存義務化
以前はデータで受け取った請求書・領収書を、紙に出力して保存することが認められていました。しかし、2022年以降はデータで受け取った請求書・領収書はデータのまま保存することが義務化されました。
メールで受け取った請求書・領収書には、これらのPDFファイルのほか、Amazon、楽天などで発行されるデータの領収書等も含まれます。つまり、データの請求書・領収書を受け取るすべての企業が電子帳簿保存法に準拠しなければなりません。
どんな規模の会社も『データで受け取った請求書・領収書はデータのまま保存』するのが義務となりました。例外はありませんのでご注意ください。
2.スキャナ保存の要件緩和
スキャナ保存とは、請求書や領収書をスキャナでデータ化して保存することを言います。改正前の電子帳簿保存法では、『受領者の自筆署名』と、『おおむね3営業日以内』にタイムスタンプを付与する必要がありました。
しかし、改正後は『受領者の自筆署名』は廃止され、タイムスタンプは『最長約2か月とおおむね7営業日以内に付与』と大幅に要件が緩和されました。また2022年1月の改正で請求書・領収書の場合、タイムスタンプは必須ではなくなりました。具体的には、下記のいずれかの対策をした場合はタイムスタンプの付与自体が不要となります。
【対策1】データの訂正削除を行った場合にその記録が残るシステム又は訂正削除ができないシステムを利用する
この対策は、記録の訂正・削除を行うと訂正前・削除前の記録と訂正・削除された内容が別の記録に自動的に記録されるシステム、もしくは記録の訂正・削除が物理的にできないシステムを利用する対策です。つまり『これらの役割を担っていたタイムスタンプの代わりに、記録の改ざんを防止可能なシステムを用意すればOK!』ということになります。
【対策2】訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付け
この対策は、国税庁HPから事務処理規程のサンプルをダウンロードし、会社に合うように規程を整備する対策です。少々手間はかかりますが、請求書・領収書の電子化は費用0円で可能になります。
ただし、この書類が契約書である(=電子契約)の場合、改ざん対策の観点からタイムスタンプは必須ですのでご注意ください(電子契約に関するタイムスタンプの情報は以下の記事で解説しています)。
3.検索要件の緩和
以前は、取引年月日・勘定科目・取引金額に加えてその他の主要な記録項目を検索条件として設定でき、さらに金額範囲を指定して条件設定できることが検索要件を満たす条件でした。また、2つ以上の任意項目を組み合わせて条件を設定できないと検索要件を満たせませんでした。
しかし、2022年1月の改正によって「取引年月日・勘定科目・取引金額の3つの項目で検索出来ればOK」となりました。請求書・領収書のファイル名に3つの項目を記載しておくだけで検索要件に準拠できます。
なお、電子契約などで締結した契約書の場合は、「取引年月日・契約書名・取引金額」の3項目を記載しておきましょう。
4.【ペナルティ強化】改ざん・捏造の重加算税率が増加
改正によって要件が緩和されましたが、その一方で電子データの改ざん・捏造した際の、罰則が強化されました。通常、改ざん・捏造が発覚した場合は35%の重加算税が徴収されますが、電子データの改ざん・捏造の場合は45%の重加算税が徴収されます。
5.事前承認制度の廃止
電子保存を導入するには原則3ヶ月前までに税務署長へ申請し、承認を受ける必要がありました。しかし、改正後は事前承認の手続きが不要となります。 電子帳簿保存法で定められた環境を整備できれば今すぐにでも電子保存が可能ですので、ペーパーレス化のハードルは大幅に低下しました。
【これだけでOK】電子帳簿保存法改正に伴う5つの対応
ここからは「結局、何をすれば電子帳簿保存法に対応できるの?」という疑問に対し、【請求書・領収書の場合】と【電子契約の場合】の2つに分けてお答えします。
請求書・領収書で行うべき3つの対応
- データで送られた請求書・契約書はデータで保存
- 訂正削除の防止に関する事務処理規程の備付けをする
- 電子データをファイル保存する際、日付、取引先名、金額をファイル名に入れる
請求書や領収書は上記3つの対策を行うだけで電子帳簿保存法に対応することができます。一切費用をかけずに実施できますので、まだ対応していない方は早急に対応しましょう。
電子契約で行うべき2つの対応
- タイムスタンプは付与されるのか?
- 取引年月日・契約書名・取引金額で検索できるのか?
電子契約サービスを利用している場合、もしくは利用を予定している場合は、サービスの運営会社に電子帳簿保存法に準拠したサービスなのかを確認しましょう(取引先が電子契約サービスを利用している場合も、安全面で問題が無いのか確認しておくと万が一裁判に発展した時も安心です)。
電子契約の場合、タイムスタンプの有無と検索機能が要件になりますので、こちらの確認を行ってください。
【まとめ】法改正に伴い早急に対応が必要
本記事では、2022年1月からの電子帳簿保存法の改正点5つ・対応する方法をお伝えしました。「今すぐ準拠しないと罰せられる!」という可能性は低いですが、最悪の場合は青色申告の取り消しのリスクもある重大な改正です。まだ対応できていない方は、可能な限り早く対応するようにしてください。
また、この法改正に伴ってペーパーレス化のハードルが低下していますので、業務効率化をお考えの方はこれを機にペーパーレス化に取り組むのもおすすめです。
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