業務効率化やコスト削減といった様々なメリットから注目されている電子契約。 興味があっても「作り方がわからない。」「導入の手順が分からない。」「サービスの選び方が分からない。」など、悩みが尽きないのではないでしょうか。契約業務の効率化や経費削減が可能なため注目されている電子契約や電子契約書ですが、従来の書面での契約と契約に必要な作業が大きく異なるため、導入にあたって様々な準備が必要です。
ただ契約して導入するだけでは社内や取引先を混乱させるだけでコストや業務量の削減効果は見込めません。
本記事では、電子契約書の作り方と、電子契約を失敗せず導入できる手順を詳しく解説するとともに、サービスの選定ポイントもご紹介しています。 電子契約の導入に関心がある方の疑問に答える内容となっていますので、ぜひ参考にしてください。
【電子契約書の作り方】電子契約に対応した契約書の作り方を解説
まず初めに、電子契約書の作り方を具体的に解説していきます。知っておくべきことは以下の2点ですので、これらを解説します。電子契約書の作成&保存で満たすべき法律要件
電子契約書の作成や運用、保存を行う際は、「e-文書法」と「電子帳簿保存法」という2つの法律が定める要件(合計9つ)を満たす必要があります。 9つというと数が多くて大変なように思えますが、クラウドコントラクトのような電子契約サービスを導入すればどれも簡単に満たすことができるので実際の手間は少ないです。 この2つの法律の概要と定める要件、満たす方法を簡潔に解説します。【契約書の作成】満たすべきe-文書法の要件
e-文書法とは、「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律」と「民間事業者等が行う書面の保存等における情報通信の技術の利用に関する法律の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」という2つの法律をまとめた通称です。
法律で保存義務が求められている書類に対して、紙だけでなく電子化したファイルでの保存を認める内容となっています。契約書はもちろん、領収書といった会社関係の書類や決算に関わる書類も対象です。
経済産業省では、e-文書法に対して以下のような4つの基本要件を定めています。見読性 |
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完全性 |
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機密性 |
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検索性 |
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【契約書の保管】満たすべき電子帳簿保存法の要件
e-文書法に似た法律として、法人税法や所得税法などの国税関連の帳簿や書類を電子データやスキャンしたデータで保存することを認める法律「電子帳簿保存法」があります。 国税庁により、電子帳簿保存法には以下の要件を満たすよう定められています。- 税務職員による電磁的記録のダウンロードの求めに応じることができるようにしている
- 保存にかかるシステム(クラウド等)関係書類等(システム概要書、システム仕様書、操作説明書、事務処理マニュアル等)を備え付ける
- 保存場所に、プリンタやこれらの操作マニュアル(説明書等)を備え付け、印刷できるようにしておく
- データを原則として7年間保存する【保存義務】
- 訂正削除の事実及び内容を確認できるクラウドサービスで保管すること【青色申告利用時】
- 帳簿書類を受領してから2か月を経過したあとに入力を行った場合には、その事実を確認できる電子計算機処理システムを使用すること【青色申告利用時】
- 電子化した帳簿の記録事項とその帳簿に関連する他の帳簿に関連する他の帳簿の記録事項との間で、その関連性を確認することができること(保存対象帳簿とデータファイル名に一連番号を記録するなど)【青色申告利用時】
白色申告を利用される方は、上記の1~4までを満たせば問題ございません。 ただし、上記の要件を満たすだけでは、所得税の青色申告特別控除(65万円)の適用を受けることはできません。青色申告特別控除を受けるためには、5~7の要件も満たす必要があります。
なお、2にある概要書はクラウドコントラクトのような他社が提供する電子契約サービスを使用すれば不要です。また、改ざん対策である5の要件は、電子契約サービスについている機能で満たすことが可能であるため、サービスを導入するだけで対応できます。
このように、電子契約サービスを利用するだけで全ての要件を簡単に満たせるようになりますので、複雑に見える電子帳簿保存法への対応も実際は簡単です。
電子契約書と書面契約書で使用する文言の違いと変更点を解説
- 「事前の書面による承諾なしに」という表現の該当箇所
- 契約書の後文で使用される「本書2通作成し」
- 契約書の後文で使用される「甲乙記名押印の上」「署名捺印の上」「甲・乙各1通を保有」
書面で交わす契約書と電子契約で交わす契約書とでは、契約書の文言を一部変える必要があります。条件面や金額といった契約の主な箇所は変えなくても良いのですが、電子契約では保管方法のほか、署名捺印・記名押印を行わないことで何をもって契約締結とみなすかなど、主に手続きに関連する部分の規定が異なってきます。
具体的には、「書面」という文言をすべて「電磁的記録」に変更するほか、「写し(複製)」という文言をすべて「原本と写し」を意味する表現に変更することが、電子契約書の文言を作成する際のポイントです。また、電子契約書における署名欄の扱いと変更方法や、電子データでの保管と書面での保管を併用しないことも重要となりますのでご注意ください。
なお、インターネット上に存在するテンプレートを含めて、世の中に存在する契約書は基本的に書面での契約用に作成されています。そのため、電子契約書を導入するにあたっては文言の変更は必須です。文言の変更は自社で行えますが、文言変更後は弁護士にリーガルチェックを依頼するのがベストといえます。
電子契約の導入方法3種類を比較
電子契約書の導入において重要な、電子化した契約書で契約を締結する方法は3種類あります。しかし、そのうち2つはすぐに導入できる代わりに法的効力に難があるため、仕事での使用に適した方法は1種類のみです。 安全性の比較も兼ねて3種類すべて解説しますので参考にしてください。メールやビジネスチャットで契約を締結する【無料だが危険】
民法第522条によると、1項に「契約は、契約の内容を示してその締結を申し入れる意思表示(以下「申込み」という。)に対して相手方が承諾をしたときに成立する」、2項に「契約の成立には、法令に特別の定めがある場合を除き、書面の作成その他の方式を具備することを要しない」とあります。
契約締結にあたっては必ずしも契約書を作成する必要はなく、メールやビジネスチャットで記載するだけでも電子契約書は導入可能ということです。
この規定に則ったメールやビジネスチャットで電子契約を導入する手段として以下の3つのような方法があります。
- メールやビジネスチャットの本文内に契約条件を直接記載し、返信で同意をもらう
- メールやビジネスチャットにPDFファイルなどで電子契約書のファイルを添付し、返信で同意をもらう
- メールやビジネスチャットに電子署名ができる文書作成ソフトで作成した契約書のファイルを添付し、送信相手に電子署名を行ってもらう
1と2の方法では電子署名もタイムスタンプも使用できないため、「いつ誰が契約を締結したのか」という事実や、契約内容が改ざんされていないかどうかの証明が難しくなります。メールやビジネスチャットでの電子契約は無料で導入できますが、おすすめをするものではありません。
3の方法については後述しますが、こちらも(1と2よりはマシであるとはいえ)安全性は低いです。
このように、法律上、メールやビジネスチャットでも契約締結は行えますが、法的効力は低く安全性も高いとはいえませんので、電子契約サービスを使って導入するのが最も安全です。
電子契約サービスと呼ばれる専用の電子契約システムが月額数万円以上もしたのは過去の話であり、現在ではクラウドコントラクトのように月額数千円程度で利用できる電子契約サービスもたくさんあります。専用のシステムを使用することを強くおすすめします。
Word等の文書作成ソフトを使う【法的効力に不備あり】 WordやAdobe Acrobatといった電子署名を使える文書作成ソフトやPDF作成ソフトを使用して、電子契約書を導入することも可能です。
これらのソフトで作成した契約書のファイルをメールやビジネスチャットに添付して相手とやり取りし、双方で電子署名を行うことで契約を締結する形を取ります。
ただし、こういったソフトはタイムスタンプが使えないために契約締結日時の証明が難しいのが難点です。契約書は「いつ契約を締結したのか」も大切な要素となりますので、これが証明できない文書作成ソフトを使った電子契約は法的効力が弱いといえます。
専用の電子契約サービスであればタイムスタンプが使用できるので法的効力についての心配が不要であるほか、文書作成ソフトよりも操作が直感的で使いやすいので社内や取引先の理解を得やすいといったメリットもあります。
電子契約サービスを利用する【低コストで安全】
電子契約の際に専用の電子契約サービスを利用すれば、タイムスタンプと電子署名を併用することができます。よって、契約書に「いつ誰が契約を締結したのか」という本人性と、契約書が改ざんされていないという真実性の強い証拠力を持たせることが可能です。
利用料金は電子契約サービスによって異なりますが、月額3,980円から利用できるクラウドコントラクトを含め、月額数千円程度で導入できるサービスが多数あるため、安全かつ低コストで電子契約をスタートすることができます。 ビジネスシーンにおいて契約書は重要なものです。法的効力や証拠能力を担保するためには、ある程度の投資はするべきでしょう。
「3種類の導入方法の中から最適な電子契約の方法は電子契約サービスである」という理由から、以下からは電子契約サービスを使った電子契約の導入手順方法を解説していきます。
電子契約の導入手順を解説【11ステップ】
ここから、本題である電子契約導入の手順を解説していきます。電子契約の導入には様々な準備が必要になりますので、先に全体像を把握したほうが作業がしやすくなります。
この記事では必要な作業を理解しやすいよう、なるべくタスクを細分化して詳しく記載していますので、ぜひすべてに目を通して参考にしてください。
1.導入する目的を明確化する
- 電子契約サービスによって機能やプラン、ターゲットの企業(業界・規模)は異なる
- 自社の規模や解決したい課題を把握したうえで選ばないと、「必要な機能がない」「不要な機能が多く料金が高額」といった事態になる
- 契約書を扱っている電子契約はサービスの乗り換えが行いにくいため最初が肝心
それぞれの電子契約サービスによって、使える機能や適した企業はさまざまです。
例えば、大企業を対象にした電子契約サービスと、中小企業や個人事業主を対象とした電子契約サービスは異なります。その中には、高機能ですが利用料金は高額なサービスがあれば、機能数は少なめですが操作方法がシンプルで低価格で利用できるサービスもあります。
電子契約を導入することによる最大目的はコスト削減にあるのか、業務効率化にあるのかなどを考えていかないと適切なサービスを選ぶことができません。また、業務効率化1つとっても「郵送や印刷の手間を省きたい」「他のITサービスと連携させて自動化やDX化を推進したい」など様々です。
抽象的に目的を考えるのではなく具体的な考えを持つ事が大切になりますので、実現したいことを具体的に言語化した上でリストアップし、判断軸として使用するようにしましょう。
- 経費の削減を行いたい(印紙税・郵送費用・紙代&印刷費用)
- 作業量を削減とテレワーク中の社員や出張中の社員が稟議等の契約業務に参加できる体制の構築によって業務の効率化を行いたい
2.法務関係者へ説明を行う
- 電子契約サービスの法的な有効性を法務担当者に説明する
- 契約業務の業務フローに変更が生じることも伝えて機能面に要望があれば聞き取る
- 法務部主導で導入を行う場合や法務担当者に予め話をつけている場合は不要
- この段階で法務担当者を導入チームに引き入れてしまうと作業がはかどる
次に、電子契約が法的に有効であること、契約書の内容や業務フローに一部変更が生じることを法務担当者に説明します。
電子契約でも法的効力があるということ・裁判沙汰になった時でも証拠力を発揮することなどを説明して理解を得るとともに、現状の契約業務で課題に感じていることや非効率になっていることを聞き取り、サービス選定に生かすようにしましょう。
電子契約を導入するには既存の契約フローを見直したり、契約書の文言を見直したりする必要があるため、法務部や法務担当者の協力が欠かせません。
また、実務を行う法務担当者にとって使いにくいサービスを選んでしまうと、業務効率化の効果が得られない恐れもありますので、このステップは重要です。
※近年は電子契約が普及し始めており、認知度が高まっているので詳しい説明は不要な場合もあります。特に、法務部や法務担当者主導で電子契約を導入する場合や、導入チームに法務担当者が居る場合にはこの説明は必要ありません。
ちなみに、導入チームに法務担当者が居ない場合は、説明の段階で法務担当者を導入作業を行うメンバーに引き入れられそうな場合は引き入れてしまうことをおすすめします。
電子契約導入時のワークフローの変更には法務部や法務担当者の関与がサポートが不可欠になるため、導入チームの中に法務担当者がいると導入作業の効率化が期待できます。
3.電子契約を活用する書類の決定
- いきなりすべての契約書を電子化すると社員が混乱する可能性が高い
- 重要度が低い契約書や使用頻度が高い契約書から順番に電子契約を導入していくのがおすすめ
- この段階で電子化する契約書の順番を決めておくとよい
ここまでの準備が整ったら、次にどの契約書を電子化するか決めましょう。基本的には、最終的には全ての契約書を電子化することになりますが、いきなり全ての契約を電子契約で行うと社員が混乱する可能性が高いので、少しずつ電子化する契約書を増やしていく、段階的な電子化をするほうが望ましいです。
いきなり全ての契約を電子化して「結局、紙の契約の方が慣れていてやりやすい」という雰囲気ができてしまうと、電子契約が定着しなくなってしまう恐れがあります。
電子契約を定着させるには、重要度の低い契約書、使用頻度の高い契約書から徐々に電子化していくことがおすすめです。重要度の低い契約書から始めることで過度な緊張をせずに電子契約の操作に慣れていけるので、ゆくゆくは重要な契約書でもスムーズに契約を行えるようになります。
また使用頻度の高い契約書から電子化することで、契約担当者が「電子契約の方が契約の手間が省ける」ことを実感できるので電子契約の定着につながります。
以上の理由から、この段階で最初に電子契約を導入する契約書を決定するとともに、完全な電子契約導入までのロードマップを作成して電子化する契約書の順番を決めておくことをおすすめします。
4.各社の電子契約サービスを比較検討する【判断基準の例あり】
- 名前を聞いたことがあるといった漠然とした理由で選ぶと失敗するのでここまでのステップを踏んで判断軸を作っておくべき
- 無料のお試しを使って比較するのがおすすめ
- ニーズによって適しているサービスが異なるので、電子契約で実現したいことをよく検討する
電子契約を導入する準備を整えたら、契約する電子契約サービスの選定を実施しましょう。1でまとめた判断軸を用いて、これらが実現できるサービスを探していきます。
※課題解決を目的としてITサービスを導入する場合は、いきなりサービス選びから入るのではなく、課題把握といった判断軸を作っておくことが大切です。
サービスを選ぶ際は、最初から1つのサービスに絞りきるのではなく、複数のサービスを候補としてから選定していくのが良いでしょう。ただし、選ぶ際は「サービス名を聞いたことがあるから」といった漠然とした理由で選ぶと失敗する原因になります。ここまでのステップを踏んで作った判断軸を用いて、解決したい自社の課題は何なのかをよく把握しておきましょう。
なお、目的に応じた電子契約サービスを導入する際の判断基準の具体例を、後の「電子契約サービス選定のポイント」でご紹介しています。
5.お試し利用で使い勝手を確認し導入するサービスを決定
電子契約サービスは一定の間、お試し利用(無料トライアル)できるサービスも多くあります。いきなり契約するのはリスクが大きいので、「4」で選定した複数のサービスをお試し利用し、自社に最適なサービスを探していきましょう。
なお、お試し利用には、お試し利用期間が決まっているサービスとお試し利用期間無制限のサービスの2種類があります。利用期間が決まっているサービスはオプションを除いてほぼ全ての機能を使えることが多い一方、利用期間無制限のサービスは利用機能を大幅に制限されていることがあります。自社が利用する予定の機能をできるだけ多く試用できるサービスが理想ですので、利用条件をよく確認してから、お試し利用を行うようにしましょう。
候補に挙げたサービスは、全てお試し利用を行って使い勝手や評判を記録しておいて、最終的に利用するサービスを決めます。ただし、まだこの段階で正式契約までは行いません。
6.電子化する契約書の文面を確認・変更する
電子契約と書面の契約で契約内容を変更する必要はありませんが、書面の契約書特有の文章の表現を変更する必要があります。
例えば「本書2通を作成し、各自1通ずつ保管する。」という文章であれば「本電子契約書ファイルを作成し、各自電子データで保管する。」といった文章に変更する必要があります。電子契約に応じた文章に変更しないと契約書として成立しないので、きちんと確認をして契約を取り交わすようにしてください。
サービス提供企業に電子契約の文面について相談するのも有効です。7.電子契約の運用方法・承認ワークフローを整理する
- 決済者や利用権限を持つ社員を決める必要がある
- ワークフロー(稟議)の流れも決定する必要がある
- 曖昧なまま運用すると「独断で契約が行われる」「テレワークや決裁者の出張時に稟議が滞る」などのトラブルにつながる
電子契約に移行する際には運用方法を整理する必要があります。例えば電子契約における決済者を決めたり、どの社員に利用権限を与えるか決めたりする必要があります。
また、ワークフロー(稟議)の整理も重要です。
運用方法やワークフローを曖昧にしてしまうと、利用権限のない社員が契約してしまう、テレワーク下で契約が滞ってしまうなどのトラブルに繋がる可能性が高くなってしまいます。本格的に運用を開始する前に契約書を送信する際の承認ルートを明確にし、どの社員を稟議に含めるのかを事前に決めておくようにしてください。
8.社内規定を電子契約に対応したものに整備する
- 契約に関する社内規定がある場合、紙の契約書のみを想定したものであることが大半なので見直し(改訂or規定の新規作成)が必要
- 個人事業主や一人法人は飛ばしてOK
- 「文書」という言葉には「電子ファイル(=電子契約書)」が含まれることを明記する
- 「電子ファイル(=電子契約書)」は押印ではなく署名で契約の締結や稟議の承認を行うことを明記する(電子契約には印鑑がないため)
契約書だけでなく社内で使用している社内規定も書面での契約締結を想定したものになっているのが一般的ですので、社内の契約規程も電子契約に対応した文面に変更する必要があります。
例えば、押印規程や印章管理規程に「文書に対する押印」という文言がある場合、電子契約を導入する際は「電子ファイルに対する電子署名」という文言に変更する、もしくは「文書には電子ファイルを含める。」といった文言を追加しなければなりません(従来の規程の他に電子契約専用の規程を設けることでも対応できます)。
なお、個人事業主や一人法人の方はこの作業は飛ばしていただいて構いません。 また、複数の社員がいる企業様で社内規定を設けていない方は、この機会に作成することをご検討ください。
9.電子契約の導入&運用ルールを全社にアナウンスする
電子契約を導入することを全社員にアナウンスをします。運用方法がどのように変わったのか、電子契約の決裁者は誰なのかを社員に告知しましょう。
加えて、実際に契約業務を行う担当者には操作方法や運用ルールに関してより詳細な説明を行いましょう。この機会を設けることで、よりスムーズに電子契約に切り替えることができます。対象者が多い場合は説明会の開催を行うことも検討してください。
10.取引先への通知・説明を行う
最後に取引先に電子契約の利用の同意を得ましょう。
例えば取引先との力関係で自社の方が強い立場ならリーダーシップを持って契約の電子化を進め、一方で立場が弱い場合は電子契約を利用することのメリットを紹介し、相手方にとってもメリットがある点を説明して同意をもらうようにしましょう。
いずれの場合も法的な安全性・電子契約の操作方法について説明して電子契約に関する不安を取り除くことが重要になります。電子契約について詳しい説明が難しいようであれば、サービス提供企業に説明を代理で行ってもらえないか交渉したり、説明資料の作成などのサポートを依頼することも検討しましょう。
11.電子契約サービスを契約する
無料トライアル後、ここまでの導入準備が終わったらいよいよ電子契約サービスを導入します。 最後にサービスの機能や料金に関して最終確認を行い、問題がなければ契約しましょう。あとは3で決めた順番に応じて段階的に契約書を電子化していき、社内での定着を図ってください。電子契約サービス選定のポイント
電子契約の導入成功において手順と同じくらい大切なポイントが、導入する電子契約サービスの選択です。
きちんとした手順を踏んでスムーズな導入を行ったとしても、コストや使い勝手など様々な面で自社に合わないシステムを導入してしまった場合、社内に定着しなかったり、かえってコストが増加するなどして業務に悪影響を及ぼしてしまいます。
しかし、きちんとポイントを押さえて導入する電子契約サービスを選べば、今まで以上の業務効率化やコストの削減効果が期待できます。ここからは電子契約サービス選びで着目すべきポイントやコツをご紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
導入コストと求める機能のバランス【具体例あり】
電子契約サービスは高機能になればなるほど、できることが増える一方で利用料も高額になります。
高機能なサービス自体が悪いわけではありませんが、機能があまり搭載されていても使いこなせないことが多く「機能が豊富=良い」とも言い切れず、「コスト削減のために導入したのに結局コストが上がってしまった」という事態にもなりかねません。業務効率化も重要ですが、機能に応じて月額利用料が上がる点は念頭に置くべきです。
そこでコストを抑えるためには、自社に必要な機能の取捨選択が重要となります。 コストを抑えるだけでなく効率化に向けて投資する考えも大切なので、必要な機能の把握と優先順位を決めておき、割けるコストの上限を考えながら自社に最適なサービスを選ぶべきだといえるでしょう。
以下に3つの具体例を用意しましたので、こちらも参考に優先順位付けを行ってみましょう。
【例1】契約業務にかかる経費を削減したい企業の場合
まずは月額費用を確認しましょう。電子契約では書面の契約にかかる様々な費用を削減できますが、現状かかっている契約費用よりも高額なサービスを導入してしまうと、かえって書面の契約よりも費用がかさんでしまいます。
サービスによっては送信費用など、月額費用のほかに別途料金がかかる場合があるので注意が必要です。
電子契約業界はお金を出せばいくらでも高機能なサービスが使用できる状態であり、逆に言えば料金の安さと機能の充実度はトレードオフになっています。
よって、経費削減を第一に考える企業の場合は月額費用を最優先に考え、そのうえで必要な機能を見極めて実際にどれくらいのお金をかけるかを検討していきましょう。
【例2】契約業務だけでなく関連する業務も効率化したい企業の場合
電子契約には他のクラウドサービスや社内システムと連携できるものがあり、それらを活用することで他の業務の効率化を図ることもできます。これらの機能の利用を検討されている方は、システム連携ができるかどうかや、また用途に応じて社内システムとの連携といったカスタマイズを行えるかを確認しましょう。
ただし、連携システムがついている電子契約サービスは費用が高額であるケースが一般的です(1サービスに付き月額10,000円以上の追加料金など)。加えて、連携方法の多くがAPI連携であることから、社内エンジニアが必要になる場合もあります。
したがって、連携機能の利用をお考えの方は、予算と連携機能の管理を行える人材が社内にいるかどうかをよく確認して電子契約サービスを選ぶようにしましょう。
【例3】主にリモートワークで活用したい企業の場合
簡単に操作できる事を優先してサービスを選びましょう。機能が多く直感的に操作できないサービスの場合「リモートワークで利用したいのに操作方法が難しく、契約が滞ってしまった。」というような事態が起こりかねません。
IT人材ばかりが所属しているITスタートアップのような一部のケースを除き、多くの企業では社員ごとにITスキルに差がある事が一般的ですので、担当者の席まで行って操作を教えることができないリモートワークで電子契約サービスを使用する場合は、使いやすさが非常に重要なります。
現在、クラウドコントラクトを含め、多くの電子契約サービスが無料トライアル(お試し利用)を実施しています。実際に利用してみて使いやすいサービスを選ぶことが大切ですので、これらを積極的に利用するのが成功のコツです。
使いやすさ
自社や取引先の社員が使いこなせるかどうかという観点も重要です。
せっかく導入しても「複雑なシステムで上手く使えない。」「操作の説明に時間がかかり過ぎる」といった事態による効率化の低下や定着の失敗が起きると意味がありませんので、社員のITリテラシーを考慮して、操作しやすいサービスを導入しましょう。
一般的に、高機能なサービスになるほど、その機能の多さに比例して覚える必要があることや操作が複雑かつ多量になる傾向にあります。
高機能なサービスほど良いサービスに思えがちですが、使わない機能に払うお金は無駄なコストです。自社に取って必要な機能は何なのか、どの程度の機能性を求めているのかをよく考えてサービスを選ぶのが後悔しないためのポイントといえます。
サポート体制
電子契約のような馴染みのない新しいサービスを導入する際に大切なのがサポート体制です。
導入してからも電話でサポートしてもらえるのか、それともチャットのみなのか?直接的な契約者ではない取引先への説明なども請け負ってもらえるのか?など、受けられるサポートを確認しておきましょう。
セキュリティ機能と証拠力【タイムスタンプと電子署名&立会人型・当事者型】
- タイムスタンプと電子署名は両方必須
- 立会人型と当事者型も検討する(求めるセキュリティレベルに応じて選ぶ)
サーバー上で一括管理する電子契約では、契約書を外部のサイバー攻撃から守るセキュリティ能力と契約書の法的効力の担保が非常に重要です。電子署名・タイムスタンプが備わっていれば、改ざん・捏造を防止することが可能ですので、必ずこれらが使用できるサービスを選びましょう。
ちなみに、電子署名は「契約書の締結者」と「改ざんされていないこと」を、タイムスタンプは「契約書の締結日時」と「改ざんされていないこと」を証明します。両方が備わっていないと十分な証拠能力が得られませんので、必ずどちらも利用できるサービスを選びましょう。加えて、権限管理などで、内部の人間が不用意に操作できない機能があると、内部のセキュリティに関しても安心できます。
また、電子契約サービスは、使用する電子署名の種類によって「立会人型」と「当事者型」に分かれており、当事者型の電子契約は利用料金が高額である代わりに立会人型の電子契約と比較してより強固な証拠能力を有しています。
立会人型の電子契約サービスは全サービスの8割を占めるともいわれるほど一般的な物であり、決して証拠能力が低いわけではありません。しかし、金融関係や特許関係などのセキュリティが非常に重要になる業種の方は当事者型の電子契約のほうが適している場合もありますので、自社に必要なセキュリティレベルをよく検討することも大切です。
【必須】e-文書法と電子帳簿保存法へ対応状況を確認する
導入を検討している電子契約サービスがe-文書法と電子帳簿保存法の両方に対応しているかどうかも必ず確認が必要です。
e-文書法の4つの要件のうち「見読性」「完全性」「機密性」については、タイムスタンプと電子署名が搭載されているサービスであれば基本的にどのサービスでも満たせると考えて問題ありません。
注意が必要なのは、電子帳簿保存法の「検索性」を満たすために必要な電子契約サービスの検索機能です。
検索機能が搭載されていないサービスを選んでしまうと電子帳簿保存法に対応することができませんので、必ず検索機能が搭載されているサービスを選ぶようにしましょう。
なお、ファイルに「日付」「取引先名」「金額」の3つの項目を付ければキーワードによる検索で該当する契約書を見つけることができるため、絞り込み検索の機能は必ずしも必要ありません。任意のキーワードで検索が行えれば十分です。
電子契約を導入するメリット
電子契約を導入することで3つのメリットが生じます。- コスト削減効果がある
- 業務効率化効果がある
- コンプライアンス&セキュリティ強化に役立つ
コスト削減効果がある
電子契約はオンライン上で完結し、印紙税もかからないため、紙代・収入印紙代・郵送代など、書面の契約で必要だったコストをまるごと削減可能です。
また、 契約書はサーバー上に保管されるため、保管スペースを借りたり、保管を外部委託したりといった、保管のための余計な出費も防ぐことができます。
上記のようなコストを削減しても、電子契約サービスにお金を払うのであれば費用は変わらないと考える方もおられるかもしれませんが、電子契約サービスが高額なシステムだったのは昔の話です。
現在も利用料金が高額なサービスは存在しますが、電子契約サービスの提供事業者が増えるにつれてその料金は多様化しており、高機能で高価なサービスから機能がシンプルで安いサービスなど、自社のニーズに応じて適したサービスを選べるようになっています。
よって、自社の掛けられるコストに応じたシステムを導入することでコスト削減効果は十分に見込めます。
業務効率化効果がある【約55%の作業数カット】
電子契約では、契約書の印刷や製本といった紙特有の作業が全て不要になるほか、郵送の手間やコストがかからなくなり、いつでもどこでも契約書を確認して締結できるようになります。
このような状況を考えると、電子契約によって契約によって発生する事務作業量を55%も削減できます。事務作業量が減ることで残業の抑制にもつながるため、無駄に発生する人件費の削減効果も期待できます。
書類の保管と管理が楽になる
契約書を電子化することで、書面の契約書のような保管場所が不要となります。また、過去に契約した契約書を容易に検索できるようになるため、管理も楽になります。
ただし、過去に書面で交わした契約書は、書面のまま保管が必要な点には注意が必要です。
コンプライアンス&セキュリティ強化に役立つ
安全面で不安に感じる方も多い電子契約ですが、むしろ書面の契約よりも安全性を高めることが可能です。
例えば、電子署名・タイムスタンプといった機能で「いつ」「誰が」「どのように」契約書を改ざんしたのか、記録を残すことができます。
また契約書はサーバー上に保管されているので、アカウントの権限管理の実施や社内規定の整備によって、持ち出し・紛失といった物理面のリスクも防げます。
電子契約を導入するデメリット・注意点
電子契約の導入にはメリットだけでなく、以下のようなデメリットや注意点もあります- 業務フローの変更が必要
- 取引先への説明が必要
- 電子化できない書類もあること
業務フローの変更が必要
電子契約は、従来の契約方法とフローが異なるため、慣れるまでに時間がかかることが予想されます。また操作が複雑な電子契約を導入した場合は、社員に丁寧に、何度もシステムの使い方を教育する必要もあるでしょう。
取引先への説明が必要
慣れ親しんだ書面での契約から電子契約に切り替えることに、反対する取引先もいるでしょう。インターネットに疎い、またはITリテラシーの低い取引先の方が居た場合、根気強くメリットや安全性を伝えて同意を取り付ける必要が生じます。
電子契約の導入で取引先にどのくらい強く出るかという問題については、自社のほうが立場が弱い場合はメリットと安全性をしっかりと伝えて同意をもらう方針で交渉するのが最も一般的です。一方で、自社のほうが立場が強い場合は、自社がリーダーシップを発揮して電子契約導入を強く推し進める形を取るのがおすすめです。
電子化できない書類もあること
すべての契約を電子化できない点には注意が必要です。代表的な例で言えば、不動産関連の契約書・訪問販売の契約などは、現時点では電子化できません。
ただし、上記以外の契約書は基本的にすべて電子化できるため、該当しない業種の方は心配無用です。
ただし、不動産関連の契約は2022年5月に電子化が解禁される予定となっており、不動産業界の電子化はより一層進むと考えられます。また、これまで数多くの契約で電子契約が解禁されてきたことを踏まえると、今後も電子化できる契約が徐々に増えていくと期待できます。
【まとめ】導入後はカスタマーサポートを活用して運用しよう!
電子契約書にはコスト削減や業務効率化など多くのメリットがあります。デメリットや注意点もありますが、それを大きく上回っていますので、電子契約書を導入する価値は大きいです。
電子契約書の導入方法にはいくつかの種類がありますが、最も安全で使いやすいのは電子契約サービスを利用することです。ただし、電子契約サービス導入直後は何かとサポートに頼ることになる可能性が高いため、サポート体制が手厚く、自社だけでなく受信する取引先企業にもサポートを提供してもらえるサービスを選ぶ事をおすすめします。
現在ご覧いただいている中小企業や個人事業主向けの電子契約サービス「クラウドコントラクト」は電話・メール・チャットという3種類の方法でのカスタマーサポートを行っており、ご契約者と取引先企業の両方にサポートを提供しております。
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タイムスタンプや電子署名といった必須機能はもちろん、相手への確認の手間を削減できる契約状況の確認機能などの便利な機能を備えつつも、直感的に使用できるシンプルなサービス。よって、印紙税や郵送代などのコストや作業時間を手軽に削減することが可能です。
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