
現代のビジネスシーンでは、契約において電子契約が広く利用されるようになりました。
本来、契約は、当事者間で行われるものですが、2者間の契約ではあるものの、契約に仲介業者など、第三者が関わるというケースがあります。仲介業者を介した取引で電子契約をする場合、利用する電子契約サービスによっては「契約当事者ではない仲介業者の電子署名が契約書に記録されてしまう」という状況があるため、不安を感じる方もいるかもしれません。今回は、この疑問について、法的な観点や、トラブルを未然に防ぐためのポイントをご紹介します。
電子契約における電子署名の「意味」について
電子契約での2者間の契約に仲介業者などの第三者が関わる場合、まずは、電子契約における電子署名の意味を理解する必要があります。
電子署名=契約書の末尾などにある記名(署名欄)と勘違いされてしまうことが多いのですが、電子契約における電子署名は、電子契約で締結した契約書(PDFなど)の電子データの内部に、暗号技術を用いて付与される情報となり、契約書の表面上に見える契約書の末尾などにある記名(署名欄)とは異なります。この暗号技術を用いて付与される電子署名には、大きく分けて二つの意味合いがあります。
1. 契約当事者の「合意」を示す
電子署名は、紙の契約書における署名や押印と同じ役割となる、契約当事者双方が契約書の内容に同意し、契約を締結する意思があったことを示す意味合いを持ちます。
2. 契約書の「真正性」や「非改ざん性」を担保する
電子署名には、契約当事者の合意の意思を示す意味合いの他「この文書は締結後に内容が変更(改ざん)されていない」ことを証明するための情報としての機能を持ちます。
電子署名の仕組みについては、以下記事で解説していますので、ぜひご覧ください。
【図解】電子署名とは?役割や仕組みをわかりやすく解説
2者間の契約に仲介業者の電子署名が入っても法的に大丈夫?
仲介業者が契約書の送付を担う場合の電子契約において、一番気になるのが「電子署名に契約当事者以外の電子署名が含まれても法的に大丈夫なの?」という点です。
結論から言うと、電子署名に契約当事者以外(第三者)の電子署名が含まれていても、契約書の内容が2者間のものであれば、法的に問題になる可能性は非常に低いと考えられます。
これには、契約における意思表示の原則と電子署名法の解釈が関わってきます。
・意思表示の原則
契約における署名や押印(電子署名も含む)は、その者が契約内容に合意したという意思表示です。A社とB社の契約において契約書内に仲介業者分の署名欄がなく、かつ契約書内で仲介業者の役割が契約当事者ではなく仲介の立場であることが明記されていれば、仲介業者が契約当事者として意思表示をしたと解釈される可能性は極めて低くなります。
・電子署名法の解釈
電子署名法において、電子署名は「本人性」と「非改ざん性」を証明するものであり、その電子署名が誰によってどのような意図で付与されたかが重要となります。電子契約サービスが提供する「事業者署名型(立会人型)」の電子署名の場合、電子契約サービスの送付者のアカウントアドレスが、自動で締結後の書類に電子署名として付与されることがありますが、これは文書の真正性を担保するためのものであり、契約当事者としての合意を示すものではありません。
法的な問題になる可能性が低い理由
電子契約では、2者間の契約であっても、仲介業者が契約書の送付を行う場合には、契約書内に仲介業者の署名欄が設けられていないにもかかわらず、締結後の契約書に、契約当事者以外の仲介業者の電子署名が付与されてしまう場合があります。
このような場合でも、契約書の文面上で仲介業者の立場が明確に定義されていれば、仲介業者の電子署名が付与されていたとしても、それは「仲介業者がこの文書を取り扱った」という事実や「非改ざん性」を証明するためのものとして理解されるため、第三者となる仲介業者が契約当事者であると誤解される可能性は非常に低いと考えられます。
2者間の契約に仲介業者が関わる場合の確認点
2者間の電子契約に仲介業者が関わる際、契約当事者ではなく仲介業者が用意した契約書を2者間の契約で使うケースが多くあります。仲介業者が作成した契約書を、契約当事者のどちらかが電子契約から相手に送付し、締結する形であれば、完全な2者間契約の形となり、締結後の契約書には契約当事者(2社)のみの電子署名が付与されるため、何ら問題はありません。
しかし、電子契約の場合は、電子契約の送信者(電子契約サービスの契約者/利用者)の情報が、電子署名に記録される仕様となっているサービス多く、2者間契約であっても「仲介業者に電子契約を送付してもらう」場合に、締結と同時に電子契約の送付を行った仲介業者(契約当事者ではない第三者)の情報が自動手的に電子署名に記録される可能性がありますので、契約当事者以外が電子契約の送付を行う場合には、利用する電子契約サービスの「電子署名付与の仕組み」を、事前に確認いただくことをおすすめします。
契約当事者以外の電子署名が付与される場合の注意点
仲介業者が契約書の作成のみではなく、電子契約の送付を代行するなど、2者間の契約において、契約当事者以外の電子署名が契約書のデータ内に付与されるような場合には、以下の3点に注意しましょう。
1.契約当事者を明確にする
最も重要なのは、契約書の文面において「誰が契約当事者であるか」が明確に記載されていることです。B社とC社間の契約において、仲介業者であるA社が電子署名に記録される場合は、契約書の冒頭や当事者欄に、B社とC社が契約の当事者であることがはっきりと文面で示せているか、署名欄もB社とC社のみになっているか確認しましょう。
2.仲介業者(第三者)の役割を明確にする
B社とC社間の契約において、仲介業者であるA社が電子署名に記録される場合、契約書本文中に、「A社は、本契約の締結に関し、B社とC社の間の仲介業務を行ったものである」など、A社が契約当事者ではなく、あくまで仲介業者であることが明記されていると、より安全です。これにより、A社の電子署名がシステム的に付与されたとしても、それが契約当事者としての権限をもたないことや合意の意思表示ではないことが明らかになります。
3.仲介業者(第三者)が関わることを事前に説明し合意を得る
契約書送付前(作成や確認)の段階で、B社とC社間の契約において、A社が契約当事者ではなく、仲介業者として契約に関わることは、B社・C社の両社に説明し合意を得ましょう。また、後のトラブル防止のために、契約を電子契約で行うことや、仲介業者であるA社の電子契約アカウントから送付すること、締結後の契約書にA社の電子署名が付与されることなども事前に説明しておくことをおすすめします。
【まとめ】トラブルを防ぐために
今回のような2者間の契約に仲介業者が関わる場合で、契約当事者のうち片方が仲介業者が契約に関わることを知らない場合や、契約書内に仲介業者についての明記が無く電子署名に仲介業者が含まれてしまう場合には、トラブルにつながる可能性も高くなってしまいます。
そのため、2者間の契約であっても第三者が関わる契約を電子契約で行う場合には、第三者がどのように契約に関わるかを契約当事者同士事前に把握し、契約書の内容にも第三者が関わることを明記することが重要です。
電子契約は非常に便利なツールですが、その特性を理解し、適切に利用することが重要です。電子契約の利用に関して不安な点があれば、電子契約サービスのサポートや、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
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