電子契約を調べていると「電子署名」「電子サイン」「電子印鑑」といった名称をよく見かけませんか?
似た字面であるため、意味を混同されがちで、間違えて使われていることも多くなっていますが、法的効力や技術的な仕組みにおいて違いがあるため、正しく理解することが大切です。
本記事では、これらの特徴、違い、それぞれどのようにして活用されるのか及び電子契約における適切な使い分けについて深堀して解説します。
【比較表あり】電子サインと電子署名の違い
電子サインは「電子的な署名の総称」で、電子印鑑の画像を貼る行為や、電子契約での締結行為、ウェブフォームのチェックボックスに同意する行為など、多岐にわたります。
一方、電子署名は、「電子署名及び認証業務に関する法律」(以下、「電子署名法」といいます。)第2条1項に定義があり、「電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの」で、「当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名…が行われているとき」は、「真正に成立したものと推定」されることとなります(同法3条)。
| 電子サイン | 電子署名 | |
|---|---|---|
| 意味 | 電子的な合意行為を指す広義の総称 | 電子サインのうち、電子署名法の要件を満たした、手書きの署名や押印に相当する役割を果たす電子的な仕組み |
| 法的な定義 | 法律上の明確な定義がない ※電子的な合意プロセスの総称 |
電子署名法で定義されている ※法律に基づいた「押印」の代替 |
| 紙の書類での例え | 認印 | 実印と印鑑証明 |
電子サインとは?
電子サインは、「電子的な署名の総称」で。電子的に合意を形成する行為全般を指す広義の概念です。これには以下のようなものが含まれます。
- PDFに画像化した印鑑(電子印鑑)を貼り付ける行為
- 署名欄に手書きのサインをマウスやタッチペンで描く行為
- メールやウェブフォームで「同意します」とチェックを入れる行為など
つまり、電子サインは、必ずしも厳格な本人確認やデータの非改ざん性(改ざんされていないこと)を保証するものではありません。そのため、裁判などで法的証拠として認められるには、個別に要件があります。
電子署名とは?
電子署名は、電子サインの中でも、電子署名法に則って、厳格な要件を満たしたものを指します。原則として、電子署名がされた電子契約は、押印された紙の契約書と同じように裁判などにおいて証拠とすることができます。
具体的には、以下の2つの要件(同法2条1項各号)を満たす必要があります。
| 本人性 | 電子文書が、本人の意思で作成されたものであると証明できること |
|---|---|
| 非改ざん性 | 署名後に文書が改ざんされていないと証明できること |
この要件を満たすために、電子署名では「電子証明書」や「タイムスタンプ」という技術が用いられます。電子証明書は、第三者機関が厳格な本人確認を行った上で発行するもので、これにより署名した人物が誰であるかを確実に証明します。
【注意】立会人型の電子署名=電子サインではない
よくある勘違いが、電子サイン=立会人型の電子署名と思われることです。
実際は、電子サインは、電子的に合意を形成する行為全般を指す広義の概念となるため、厳密には、「立会人型の電子署名(事業者署名型)」は、「電子サイン」という広い概念に含まれる、法的効力を持つ一つの方式となります。
完全に「イコールではない」ものの、実務上は「電子サイン」と呼ばれることが多いため、非常に微妙で混同されやすい点となっています。
この点、2020年7月に公表された総務省など3省庁連名での電子契約サービスに関するQ&Aから、立会人型(事業者署名型)についても前述の電子署名法2条1項の要件を満たせば同法の「電子署名」に含まれることが明確になっています。
電子署名と電子印鑑の違い
電子サイン・電子署名と並んで耳にすることが多いのが「電子印鑑」です。
「電子署名」と「電子印鑑」は、電子化された文書に利用される点は共通しているものの、法的効力の有無、目的、そして採用されている技術において決定的な違いがあります。
| 電子署名 | 電子ファイルの作成者を表すと同時に、そのファイルが改変されないように施す、技術的措置(仕組み) |
|---|---|
| 電子印鑑 | 電子ファイルに設置できるようにデータ化した印鑑の画像 |
セキュリティ基準や法的効力は、基本的に電子署名の方が強いものとなりますが、電子印鑑の中でも、有料のサービスの場合は、識別情報やタイムスタンプ等を組み込んだり、電子証明書を発行したりすることでセキュリティ基準、法的効力が高くなっているものも一部あります。
| 電子署名 | 電子印鑑 | |
|---|---|---|
| 法的効力 | 非常に強い ※電子署名法に基づく |
単なる画像の場合:弱い 電子署名ありの場合:強い |
| 主な目的 | 本人性の担保 ※「誰が」作成し同意したかの証明 |
「印鑑の見た目」の再現 ※視覚的な承認 |
| 技術 | 文書データに暗号技術を使用して証明情報を組み込む ※印影は必須ではない |
印影の画像データ ※JPG, PNGなど |
| 非改ざん性 | 担保される ※文書が署名後に変更されていないことを証明 |
単なる画像の場合:担保されない 電子署名ありの場合:担保される |
| 主な用途 | 重要な契約書、法的証拠力が必要な文書、公的な手続き | 社内稟議書、簡易な確認書類、電子契約サービス内での視覚的な押印 |
| 紙の書類での例え | 実印 + 印鑑証明書(または本人の手書きサイン) | 印影の画像(または認め印) |
*番外編:電子印鑑とは?
電子署名や電子サインの他、「電子印鑑」という名称もよく耳にします。
電子印鑑とは、電子ファイルにデータ化された印影を付与するというもので、これにも2種類あります。
1つ目は、スキャンや写真などで印鑑のデータを作るなど、電子署名や電子サインとは違い、本人確認や改ざん防止の機能が含まれていない「単にデジタル化した電子印鑑」、
もう一つは、法的効力を強めるために印鑑の作成者、押印者、押印日時といった識別情報が組み込まれた「識別情報付きの電子印鑑」があります。
単純に印影の画像を作成したり、実物の印影データをスキャンしたりするだけの電子印鑑です。自分でも手軽に作成することができ、日常業務の認印の代わりに利用されます。
契約で使用する場合は、この印影データのみでは、「誰が」「いつ」押したがという証拠がデータに含まれていない為、法的効力を求められない場面での「押印の代わり」として利用されます。
作成した印影の画像にAdobe AcrobatやExcel/Wordの機能を利用して作成者情報を追加したり、印影の画像を設置した契約書を電子契約で締結し、電子署名やタイムスタンプを付すことで「誰が」「いつ」押したがという証拠を残します。法的効力が求められる場面での契約では、この証拠となるデータの有無が重要となります。
*番外編:電子社印とは?
電子印鑑に似た文言として「電子社印」というものも最近よく耳にするようになりました。
これは、企業の社印(会社の認印のこと)を電子データ化したもので、電子契約やデジタル文書に押印するために使用されます。公式な法律用語や技術規格として確立されたものではないため、企業の承認や意思決定を示す目的で使用されることが多くなっています。
*番外編:eシール(電子シール)とは?
電子社印と似た概念として、インターネット上でやり取りできる「eシール(電子シール)」があります。組織や企業が発行する電子文書の「発行元」の証明や、文書の正当性と信頼性を担保するために使用されるもので、企業や組織の「デジタル版の社印・角印」のような役割を果たします。
eシールは、企業が発行するデジタル文書の信頼性を確保するための重要なツールとして、特にヨーロッパではEUの「eIDAS規則」に基づき明確に定義され、広く利用されています。近年、日本でもデジタル化の推進に伴い、組織の発行元証明としてのeシールの重要性が高まっています。
まとめ
「電子サイン」「電子署名」「電子印鑑」は、似たような言葉で似たような意味と感じられますが、電子契約利用の際には正しく理解しておくことが重要です。
- 電子サイン:電子的な合意行為を指す広義の総称
- 電子署名 :電子契約において本人確認と非改ざん性を担保する認証技術
- 電子印鑑 :データ化された印鑑の総称
- 電子社印 :データ化された企業の社印
- 電子シール:電子文書の発行元や文書の正当性を担保するためのデジタル版の社印
以下記事では、電子契約において重要となる、電子署名やタイムスタンプについても解説していますので、よろしければぜひご参考下さい。
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