【電子契約のギモン】注文書と注文請書をまとめて電子契約できる?

2026/03/12 2026/03/12

監修:弁護士法人One Asia

従来の商習慣では、「注文書」を送り、相手から「注文請書」を返送してもらうという2段階の手順が一般的でした。しかし近年、電子契約の普及に伴い、この2つの書類を1つのファイルにまとめ、電子契約サービスを通じて1回の署名フローで完結させる運用方法が広まっています。この記事では、注文書と注文請書をまとめて発行し電子契約で締結する場合の、法律上の留意点から実務上のメリット、具体的な作成や運用方法を解説します。

注文書と注文請書の役割

注文書と注文請書は、セットで運用することで一つの「契約」を完成させるパズルのような関係です。それぞれの役割を整理すると、以下のようになります。

注文書の役割

注文書とは、発注者(買い手)が商品やサービスの購入や依頼を申し込むために使用する書類で、発注者(買い手)が発行し、受注者(売り手)に送付するのが原則です。
法的には、申込みの意思やその内容を相手に示す役割を持っています。

  • 意思表示の明確化:「何を、いつまでに、いくらで」という条件を提示し、口頭による曖昧さを排除します。
  • 発注の証拠:社内で承認された正式な依頼であることを示し、無断発注などの不正を防ぎます。
  • 納期の指定:いつまでに納品すべきかという期限の条件を相手に提示する役割を持ちます。

注文請書の役割

注文請書は、受注者(売り手)が発注者(買い手)からの注文を受けたことを確認し、承諾するための書類で、受注者(売り手)が発行し発注者(買い手)に送付するのが原則です。
法的には、相手の申込内容に対する承諾の意思を示す役割を持っています。

  • 契約の成立:注文請書が交付されることで、法的に「契約が成立」したことになります。
  • トラブルの防止:受注側が納期や金額に合意したことを証明するため、後からの「そんな条件では受けていない」という主張を防ぎます。
  • 納品義務の確定:請書により承諾することで、売り手は期日通りに納品する法的義務を負うことになります。

注文書と注文請書は法律上必須?

実は、注文書と注文請書は、法律で「必ず作成しなければならない」と義務付けられているわけではありません。法律上は、口頭の「お願いします」「分かりました」だけでも問題ありませんが、後々問題が生じたときや確認のためにも証拠として注文書と注文請書をセットで交わすことが一般的となっています。

ただし、「特定の条件下」では、書面(または電磁的記録)の交付が法律で義務付けられるケースがあります。

※発注内容を記載した書面の交付が義務となるケース

以下のような取引に該当する場合は、法律によって発注内容を記載した書面の交付や締結が求められます。

取適法(中小受託取引適正化法)の対象取引
2025年1月1日までの下請法の対象となる取引については、親事業者が下請事業者に発注する場合、発注内容を記載した書面(いわゆる3条書面)を直ちに交付する義務がありました。注文書がこの「3条書面」の役割を果たすことが多いため、実務上は「義務」だったといえます。
2026年1月1日以後の受託取引については、原則、下請法の改正法である取適法(製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律、略称:中小受託取引適正化法)により、発注内容を書面又はメール等の電磁的方法により明示する義務として緩和され(いわゆる4条書面へ)、電子契約による場合も受注者側の事前承諾が不要となりました。ただし、受注側が書面の交付を求めた場合には、原則、書面により交付しなければなりません。
建設業法
建設工事の請負契約では、着工前に一定の事項を記載した書面を交付し、署名または記名押印して相互にやり取りすることが義務付けられています(建設業法第19条1項)。書面の代わりに電子契約書等による場合には、事前にその契約締結方法等について伝えた上で相手方の承諾が必要となります(同条3項)。
特定商取引法(BtoC取引など)
訪問販売や電話勧誘販売など、特定の取引形態では消費者に対して契約内容を記した書面の交付が義務付けられています。書面の代わりに電子メール等の方法による場合には相手からその旨の承諾を事前に得ることが必要であり、そのための承諾書面の交付も義務となります。

注文書と注文請書はまとめて電子契約できる?

法律では、契約は当事者間の「申込」と「承諾」の意思表示が合致すれば成立するものと定義されており、当事者のどちらがその書類を用意・送付したかは問われないため、上記のような特別な法律上の規制対象に該当しない限り、注文書と注文請書を1つのPDFにまとめ、1回の電子契約で合意締結を行っても問題ありません

建設業法:着工前に双方で署名(または記名・押印)の上締結する

建設工事の請負契約では、建設業法第19条により、着工前に一定の事項を記載した書面を交付し、署名または記名押印して相互にやり取りすることが義務付けられています。

建設業法については以下サイトをご参考ください
e-Gov|建設業法 第十九条

注文書と注文請書のやりとりは電子契約が最強!

近年は、電子契約の普及に伴い、事務効率化やコスト削減のために「1つにまとめる」運用は非常に増えています。
紙の契約では、どちらかが注文書と請書の両方をまとめて発行した場合、書類発行~締結(返送・保管)まで、最短でも平均3〜5日程かかりますが、電子契約では、どちらかが両書類を発行し電子契約サービスから送信すれば、最短数分~数時間、かつ1回の操作でまとめて締結できるため、圧倒的なスピードの違いがあります。

注文書・注文請書の締結における「紙」vs「電子」

紙での契約と電子契約では、注文書・請書による締結までにかかる、標準的なステップ数が大きく異なります。

紙の契約
(2通発行・返送)
電子契約
(1回でまとめて送付・締結)
1. 作成 注文書・請書を印刷、三つ折り PDFファイルで出力
2. 押印 社印(角印等)を押印 (不要)
3. 準備 封筒用意、宛名書き、切手貼付 (不要)
4. 送付 ポスト投函・郵便局へ 電子契約サービスから送信
5. 相手方 開封、押印、返送用封筒で投函 PC・スマホで内容確認・締結
6. 回収 返送された封筒を開封、確認 (不要)
7. 保管 ファイリング、倉庫・棚へ収納 クラウドに自動保存
WEBからDLして保存

注文書・注文請書をまとめて電子契約するメリット・デメリット

電子契約は、印刷・郵送のための費用がなくなるだけでなく、印紙税も不要となるため、コスト削減も叶います。紙での契約と電子契約をメリット・デメリット、コストの観点から比較すると次のようになります。

紙での契約 電子契約
メリット ・ITに不慣れでも対応可能
・現物の「重み」がある
・現物という信頼感を感じる
・最短数分~数時間で締結可能
・印紙代(200円〜)が不要
・郵送に関わる費用が不要
・締結までのスピードが圧倒的
デメリット ・郵送だと最短でも3日程かかる
・印紙代がかかる場合がある

・郵送事故のリスクがある
・紛失しやすく探すのが大変
・相手方のIT環境に依存する
・電子署名法等の知識が少し必要
・サービスにより仕様が若干異なる
コスト ・印刷費
・封筒/切手代
・印紙代(契約書/金額により)
・人件費
・電子契約サービス利用費(または1通ごとの費用)

紙と電子契約のどちらを選ぶべき?

自社の業務効率化やコスト削減を目的とする場合は、間違いなく電子契約がおすすめです。
取引先から電子契約を求められるケースも増えていますが、取引相手によっては、紙での契約が向いている場合もありますので、契約相手に応じて柔軟に対応できることが望ましいといえます。

紙の契約書が向いているケース

  • 取引先が極めて保守的で、社印(実印)による物理的な押印が絶対条件の場合
  • 決済者や契約担当者がパソコンやITツールに疎い場合

電子契約が向いているケース

  • 電子契約の利用に前向きな契約相手である場合
  • スピード重視の取引の場合
  • コスト削減(特に印紙代)を優先したい場合
  • テレワーク等の柔軟な働き方を推進したい場合

注文書と注文請書を電子契約する方法

注文書と請書のやりとりにおいて、電子契約サービスを使用して電子契約を行う場合、主に次の3つの方法があります。

①注文書と注文請書を1つのPDFにまとめて電子契約

この方法では、独立した「注文書」と「注文請書」を、文書作成ソフトやPDF編集ソフト等で1つのファイル(2ページ構成など)に結合した1つのファイルを作り、電子契約サービスから送付することで、1回の送付・締結の操作で契約を締結することが可能です。

  • メリット
    送信が1通で済むため、コストや手間を最低限に抑えられます。また、1つのファイル内で「注文」と「請け」が完結するため、書類がバラバラにならず、セットで管理することができます。
  • 適したシーン:
    既存の注文書・請書のフォーマットがある場合や、フォーマットを大きく変えずに事務手数料や管理の手間を減らしたい場合などはこの方法がおすすめです。

②「注文書 兼 注文請書」を作成して電子契約

注文書と注文請書の2種のファイルではなく、「注文書 兼 注文請書」として、上部に発注内容、下部に双方の合意文言と署名欄を配置するなど、「発注内容」と「双方の署名欄」を1枚の書面に集約して電子契約する方法です。この方法は、1回の送付・締結で完了できるだけでなく、証拠としての信頼性も強固になるため、電子契約では主流になりつつあるスマートな形式です。

  • メリット:
    書類枚数が最小限で済み、送付から締結までもスムーズです。また、双方が署名・押印(電子署名)することは、「私はこの内容で注文します」「私はそれを承諾します」という2つの意思を1枚の紙の上で同時に証明することができるため、法的にも合意の証拠として非常に強力なものとなります。
  • 適したシーン:
    新規取引の開始時や、従来よりも証拠力を高めたい場合、電子契約への完全移行を機に帳票のフォーマットの変更や、管理方法を効率化したい場合など。

③それぞれ書類を用意し、電子契約を送り合う

この方法では、発注者が「注文書」を電子契約で送り、受注者での締結完了後に、今度は受注者が「注文請書」を電子契約で送り、発注者が締結の操作を行います。注文書と請書を個々に送付・締結するため、従来の紙でのやり取りと同じような運用方法となります。
※この方法では、双方1回ずつ電子契約による送付が必要のため、それぞれが電子契約サービスを導入している必要があります。

  • メリット
    従来の商習慣(双方がそれぞれのタイミングで書類を発行する)をそのままデジタル化できるため、契約書の取り扱いに関する社内規定や、社内の承認フローを変える必要がありません。
  • 適したシーン
    双方で使用したい電子契約サービスが異なる場合や、システムが自動で書類を発行するために注文書と注文請書など異なるプロセスを合体させることが難しい場合、また社内規定でルールが定められている場合など。

注文書と注文請書をまとめて電子契約する場合の注意点

①電子契約をすることについて事前の承諾を得る
電子契約は、大前提として電子契約を行うことについて双方が承諾している必要があります。注文書と注文請書においても、電子契約を利用することについて事前に相手方の承諾を得ましょう

②受注側の承諾の文言を明確に記載する
受注側がどの文言に同意したのかが分からない構成では、後から契約内容を巡るトラブルにつながるリスクもあるため、受注側の「承諾」の意思が法的にハッキリと示されていることが重要です。電子契約を利用する場合は、承諾文言を明確に記載しましょう

一般的な記載例:
「発注者は、本状記載の条件により上記内容を発注し、受注者はこれを承諾し引き受けました。本契約の成立を証するため、本電子書面に各自電子署名を行います。」

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注文書と注文請書の電子契約に関するよくある質問

Q. 注文書と注文請書を1つのPDFにまとめて電子契約しても法的に有効ですか?
A. はい、建設業法などの法規制が及ぶ特殊な契約でない限り、法的に全く問題ありません。契約は「申込み(注文)」と「承諾(引き受け)」の意思が合致すれば成立します。1つの書類に双方が電子署名を行うことは、その合意を証明する強力な証拠になります。
Q. 書類タイトルは「注文書」のままでもいいですか?
A. 1通にまとめる場合は、トラブルを避けるためにも「注文書 兼 注文請書」や「個別契約書」といった、双方が合意したことが一目でわかるタイトルに変更することをお勧めします。
Q. 電子契約にした場合、収入印紙を貼る必要はありますか?
A. いいえ, 不要です。電子契約書は印紙税法上の課税文書に該当しないとされているため、取引金額がいくら高額であっても印紙税は不課税(0円)となります。これが電子化の大きなメリットの一つです。
Q. 注文書と請書、どちらが書類を発行(送付)すべきですか?
A. どちらが発行しても法的に問題ありません。一般的には、電子契約ツールを契約している側や、案件を管理する番号を採番している側(多くは発注者側)が作成・送付するのがスムーズです。
Q. 相手方が「自社指定の請書を発行したい」と言ってきた場合はどうすればいいですか?
A. 事前に請書のデータをもらえるようであれば、自社の「注文書」と、相手方の「請書」を1つのファイルにまとめてアップロードして送付・締結する方法がベストです。これで1回の署名フローに集約できます。相手方から、自社が導入している電子契約で送付したい・郵送で送りたいなどの要望があった場合は、請書は相手方の方法で送付してもらうようにしましょう。
Q. 書類に記載する日付はいつにするのが正しいですか?
A. 「発注日」を記載するのが一般的ですが、電子契約ではシステム上の「締結完了日」が自動で記録されます。最も確実なのは、日付欄を空欄にするか、「本契約の成立日は電子署名が付与された日とする」という文言を添える方法です。
Q. すでに業務が始まっている場合、過去の日付で契約を結べますか?
A. 過去の日付を記載する「バックデート」は避けるべきです。書類上の日付は「契約成立時点の日付」とし、文言の中に「本契約は〇月〇日に遡って適用する」といった「遡及(そきゅう)適用」の条項を入れるのが正しい実務です。
Q. 相手が「電子契約は不慣れで不安だ」と言っている場合は?
A. 紙の郵送で発生する切手代や印紙代、返送の手間がなくなることを伝えてみてください。また、電子契約でも「原本」としての証拠能力は紙と同等以上(タイムスタンプ等があるため)だと説明すると安心感につながります。それでも電子契約の承諾を得られない場合は、紙で取り交わすようにしましょう。
Q. 注文書と請書以外に、セットでまとめられる書類はありますか?
A. 「見積書 兼 発注書」や「納品書 兼 受領書」、「完了報告書 兼 検収書」などがあります。これらを1枚の合意書にまとめることで、業務スピードを大幅に向上させることができます。

まとめ

注文書と注文請書は、本来、申込みと承諾というそれぞれ別々の意思表示のための書類ですが、1つの書類にまとめて電子契約することで証拠として強固なものになり、コスト削減や業務スピード向上においても計り知れないメリットがあります。
契約の電子化は、取引先にとっても事務負担や印紙税が減る歓迎すべき提案です。まずは1件の取引から、「まとめて締結」の運用を始めてみてはいかがでしょうか。

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