注文請書とは? 注文書との違いや電子契約で効率化する方法を解説

2024/04/12 2024/04/12

監修:朝倉由美(弁護士。弁護士法人One Asia所属)

取引先から発注を受けた際、「注文請書(ちゅうもんうけしょ)」の発行をお願いされる場合があります。 普段耳にする機会の少ない注文請書発行に際し「注文書や発注書とどう違うのだろう?」と困った経験をお持ちの方もいるかもれません。 この記事では「注文請書」の作成方法とその役割や保管方法などを具体的に解説します。
また「注文請書」の契約にあたって、電子契約にする手順やメリットについてもお伝えしますので、ぜひ参考にしてください。

注文請書とは? 基礎情報を確認しよう

商品やサービスにかかわる発注、受注などの契約に用いられる注文請書。
一般的になじみが薄いのは、注文請書の発行が任意だという部分も大きいでしょう。
では、ビジネス上のどのようなシーンで注文請書の発行が求められるのでしょうか。
まずは注文請書の基本的な情報や注意点、また間違えやすい注文書との違いについてお伝えします。

注文請書は、受注する意志を伝える書類

注文請書とは、取引の発注者から注文を受けた受注者が発行する文書です。受注者から発注者に向け「発注された内容を承諾しました」という意思を明確に示す書類となります。
ちなみに発注者が業務の依頼やサービスを注文する際に発行するのが「注文書」にあたります。注文書には商品やサービスの詳細の他、数量や納期・納品方法、金額・支払方法などが具体的に記載されています。注文請書はこの内容を確認し、受注した旨を伝える書類です。同一の取引において「注文書」「注文請書」は一対で発行されるのが基本となっています。

注文請書はなぜ必要なのか?

注文請書および注文書の発行は義務ではなく、任意での発行が一般的です。ビジネスでの契約そのものは、「双方の合意」で成り立つため、口頭でも取引は可能になります。しかし商品やサービス、価格や納期などの細かい部分を書面で明確にすることで、無用なトラブルの発生を回避できます。また発注側、受注側それぞれの認識をすりあわせ、各々が安心して取引を進める上でも重要な役割を果たします。

特に注意が必要なのは、下請法の対象となる取引を行う場合です。取引の発注者となる親事業者側から受注者である下請事業者に対し、注文書を交付することが義務づけられているからです。注文書には、下請法第3条で定められた記載事項を盛り込まなくてはなりません。注文書と同様、セットとなる注文請書にも同様に法に則った記載を行うといいでしょう。

必要な記載事項は下請事業者の給付(または提供される役務)、下請代金の額や支払期日など12項目です。記載内容の詳細は「ポイント解説 下請法 – 公正取引委員会」をご確認ください。

注文請書と注文書・発注書との違い

「注文書」や「発注書」とは、発注する側が注文を行うときに作成する書類です。「注文請書」とは名前が似ているものの、その役割は異なります。「注文請書」は「受注書」と呼ばれることもあり、作成するのは受注する側です。

発注者が発行する「注文書」を受け、内容を「承諾した」際に作成するのが「注文請書」だと覚えておきましょう。混同しがちな「注文書」と「注文請書」について、一般的な発行の流れを以下の通り図で示しました。

注文請書には収入印紙が必要なケースがある

注文請書を発行する際、収入印紙を貼付する必要が出てくる場合があります。収入印紙が必要になるのは、取引内容が1万円以上で「請負に関する契約」に該当するケースです。つまり、注文請書が実質的に取引の成立を示す書面になると、契約書と同様の扱いとなり、印紙が必要になります。国税庁のホームページでは「建設工事のように有形的なもののほか、警備、機械保守、清掃などの役務の提供のように無形的な結果を目的とするもの」などが挙げられています。
国税庁ホームページより引用:No.7102 請負に関する契約書

さらに取引金額によって、貼付する収入印紙の金額は変わりますので注意しておきましょう。注文書・注文請書を一対として契約を行う場合、「注文請書」のみに収入印紙を貼ることが定められています。注文書には必要ありません。 注文請書を用いる取引でも、物品の譲渡契約(売買契約)は非課税ですので、収入印紙は不要です。さらに収入印紙は、この後お伝えする電子契約による注文請書作成でも不要となります

注文請書は電子契約できる?

さまざまな契約書において電子契約が進んでいますが、もちろん注文請書も電子契約で取引できます。電子契約とは、書面ではなく、契約内容を電子ファイルにし、電子署名などを付与して取り交わす「電子化」した契約です。紙を用いない電子契約では、収入印紙が不要になるなど多くのメリットがあります。注文請書を電子化する利点について詳しくご紹介します。

注文請書を電子契約で交わすメリット

注文請書を電子化することで得られるメリットは多岐にわたります。実際に電子契約を行う場合の代表的なメリットは次の通りです。

コスト削減、収入印紙も不要に

書面で作成していた注文書・注文請書を電子化した場合、大幅なコストダウンが図れます。まず紙にプリントするための印刷にかかる用紙代やインク代は不要となります。書類はオンラインで送信できますから、郵送費も削れます。これまで紙の書類を保管していたスペースも必要なくなるため、キャビネットの費用もいらなくなり、空き場所を有効に使えるようになります。加えて「紙の契約書」を想定した「印紙税」も電子契約では不要となるのも利点です。

取引がスピーディーに

紙で作成した注文書や注文請書は、郵送、FAXなどで取引相手に送るのが一般的でした。さらに相手からの返送を待った後の契約締結となるため、一定の時間がかかります。電子契約の場合、メールへの添付などオンラインでの送受信が可能です。書面でのやり取りより大幅な時間短縮ができるようになります。

書類の管理が楽に

注文書・注文請書は、法律で原則7年間の保管期間が義務づけられています。書面で作成した契約書は、ファイリングした後、別途キャビネットなどに保管しておかなければなりません。再度チェックする際も、簡単に探すのは難しいのが実情です。電子契約の場合は、クラウド上に電子ファイルを保管します。検索ルールを定めてファイル名をつけておけば、後で簡単に見つけ出せます

電子契約サービスの利用でさらに効率アップ!

電子契約サービスを使えば、より効率的に注文請書の電子契約化が進められます。もちろん、ビジネスで用いるWordやExcelなどで作成した文書でもやり取りは可能です。しかし保管に関しては、「電子帳簿保存法」に則った対応が求められます。よりシンプルに電子契約化をすすめる上でも、「電子帳簿保存法」に対応した電子契約サービスの利用をおすすめします。

例えば電子署名とタイムスタンプを付与する機能があるサービスを使えば、書類が改ざんされていない証拠となり真正性を高めることも可能です。さらに頻度の高い注文書や注文請書をテンプレート化できるサービスもあり、業務効率化も図れます。

電子契約を導入する際のよくあるQ&A

注文書が電子契約書で送られてきた場合、サービス加入は必要?

A.自身が電子契約を導入する前に、発注先から電子契約書による注文書が送られてきてしまった場合、対処に戸惑ってしまう方もいるかもしれません。契約相手が同じシステムを用いなくても利用できる「立会人型」での電子契約であれば、受注側がサービスに加入しなくても問題ありません。

一方で、先ほどお伝えしたように「注文書」と「注文請書」は一対で契約を行うのが原則です。発注先から「注文請書」を求められたら、同様の電子契約サービスを利用しなければなりません。一対の文書ですから、同じ電子契約サービスでの保管が合理的だからです。

注文請書を電子契約にしたいが、発注側にもサービス加入してもらうべき?

A.受注側が電子契約サービスを導入し、「注文請書」を発行する際も同様です。「立会人型」サービスであれば、あらためて発注先がサービスに加入しなくても取引できます。このケースでも、保管には「電子帳簿保存法」のルールに沿った対応が必要である点を発注側に説明し、理解を得た上で進める必要があります

注文請書を電子契約にする場合、発注側にサインをしてもらうべき?

A.注文書・注文請書の大きな目的は、発注側、受注側それぞれの意思確認にあります。一般的にサインや押印が求められるものではありません。発行することで「注文」と「受注」の意思を明確にしているからです。

書面から電子契約に変わっても、目的は同じです。送付するだけで意思確認ができるため、発注側のサインは不要です。電子契約サービスを使えば、誰が作成したのかを示す電子署名とタイムスタンプが自動で付与されます。

【弁護士監修】注文請書の作成方法

注文請書は契約にかかわる重要な書類です。正しく作成するためのポイントを中心に具体的な作成方法を解説します。書面、電子契約とも、それぞれ作成方法・注意点は同じです。

注文請書に記載するとよい項目

注文請書は、発注者側と受注者側の食い違いを防ぐために発行します。それぞれの認識を明らかにするため、次のような内容を記載することが大切です。

書類のタイトル

書面の上部、中央など目に入りやすいところに書類のタイトルを記載します。どういった文書なのかが一見してわかるように「注文請書」または「受注書」と書きましょう

発行日

注文請書がいつ発行されたのかは、納期や支払い期日にも関係する重要な要素です。明確に記載しておきましょう。

発注者側の名称

誰が発注者なのかを明らかにするため、会社名や所在地、担当者名を記載します。できる限り詳細な情報を明示し、所在地や電話番号などの連絡先も忘れずに書いておきます。

受注者側の名称

受注者に関しても発注者と同様、「注文を受けたの誰か」を明らかにしておきます。会社名はもちろんのこと、担当部署や直接の担当者の氏名まで記載するといいでしょう。さらに所在地や電話番号などの連絡先などもわかりやすく書いておきます。

注文の内容

注文請書は注文書とセットになっているため、内容が異ならないよう注意します。また何を受注したかを詳細に記します。商品やサービスの名前から数量はもちろん、納品方法や納品スケジュール、金額までこと細かく書いておきます。なお電子契約の場合、収入印紙は必要ありません。

支払い方法

発注者、受注者ともにトラブルが起きやすい事項が支払いに関する事柄です。どのような方法でいつ支払われるのかをわかりやすく記載します。

電子契約なら注文請書のテンプレート化が簡単

注文請書には、記載しておくべき事項はあるものの、決められた書式やフォーマットはありません。作成頻度が高い場合は、自社の業務内容に適した様式をテンプレート化しておくことをおすすめします。電子契約サービスでは、使用頻度の高い文書をテンプレート化する機能が実装されています。注文請書を作成し、発行して保管するまでのフローが一元化されており、便利に使えるメリットがあります。

注文請書の保存期間・保存方法

注文請書は一定期間保存するよう法律で定められています。また電子帳簿保存法に適した方法で保存しなければなりません。ここでは、保存期間と保存方法について詳しく解説します。

基本は税法上の保存期間7年

法人の場合、注文書や注文請書の保管は、税法上原則7年保存の必要があります(法人税法施行規則59条1項柱書、67条2項)。さらに一対の契約としてセットで保存しておかなければなりません。これは原本であっても控えであっても同じルールです(法人税法施行規則59条1項3号、67条1項1号)。
個人事業主では、青色申告・白色申告のどちらであっても、5年間保存しておく必要があります。 注文請書は「紙」で保存するのが基本とされていますが、電子帳簿保存法の法的要件を満たせば、電子化して保存することもできます。

電子保存する際の電子帳簿保存法の要件

電子文書による注文書・注文請書の取引は、電子帳簿保存法の要件に対応した方法で保管しなければなりません。電子帳簿保存法とは、一定の要件のもと、国税関係帳簿書類の一部またはすべてを電子データ(電磁的記録)で保存することを認めた法律です。
一定の要件の中には、帳簿書類の電磁的記録による保存方法も含まれます。保存方法は①電子帳簿等保存、②スキャナ保存、③電子取引のデータ保存の3つがあります。このうち、注文請書を電子契約で発行する場合は、③電子取引にあたります。
さらに電子帳簿保存法では、データの保存の要件として「真実性の確保」と「可視性の確保」を基本的事項として定めています。

「真実性の確保」についての要件

保存された注文書・注文請書のデータ(電子記録)が、削除・改ざんされていないことを示す要件が「真実性の確保」にあたります。電子データは簡単に削除・改ざんできてしまうため、書類が改ざんされていないことや、訂正や削除を確認できる履歴の存在を明確にする必要があります。電子取引における「真実性の確保」に適した保存とするためには、以下の4つの保存要件のいずれかを満たさなければなりません。

  1. タイムスタンプの付与された取引情報を受領
  2. タイムスタンプを保存するデータに付与
  3. 訂正削除の記録が残るもしくは、訂正削除がそもそもできないシステムの運用
  4. 事務処理規程を備え付け運用する

「可視性の確保」についての要件

保存したデータについて誰もがわかるように検索・表示する「可視性」にも対応しなくてはなりません。具体的には、次の条件を満たす必要があります。

  1. 電子計算機・プログラム・ディスプレイおよびプリンタ並びにこれらの操作説明書を備え付ける
  2. 取引月日・取引金額・取引先などの条件による検索機能の確保

電子帳簿保存法対応の電子契約サービスがおすすめ

電子取引は、注文書・注文請書などのデータは「オリジナルである」ことを示さなければなりません。そのため、電子帳簿保存法に則った要件を満たす必要があります。

電子帳簿保存法に対応した電子契約サービスを利用すれば迅速な導入が可能です。サービスの導入より、要件である「タイムスタンプの付与」や「検索機能の確保」に対応ができるためです。後は「モニター・操作説明書などの備付け」を実施すれば、すでに要件を満たしていることになります。

ビジネスシーンで頻繁に使われるWordやExcelによる文書をメールで送信する場合も「電子取引」となります。よく利用する注文書・注文請書の作成で業務効率化の作成を図るなら、電子契約サービスの導入が最適です。

「電子契約書の保存についてもっと詳しく知りたい」「どんな方法があるの?」という方はこちらもご参照ください。

まとめ:注文請書の発行には電子契約の検討を

紙で作成していた注文請書を電子化すれば、業務効率化、コスト削減につながります。注文請書のやり取りを便利にする電子化の導入には、法に適した対応が欠かせません。迅速に電子契約を行うためには、電子契約サービスの利用をおすすめします。

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