「書面」での契約書から電子契約に移行する際、気になるのが「法的」に問題ないかどうかという点ではないでしょうか。電子契約では、電子署名法に定められたルールに則ることで有効性や証拠力が確かなものとなります。そこでこの記事では電子契約サービス導入にあたって、知っておきたい電子署名法のポイントを詳しく解説します。
電子署名や電子契約に関する基礎知識は、電子契約とは?仕組みやメリット、導入方法など基礎知識を徹底解説 | クラウドコントラクト株式会社をご覧ください。
電子署名法とは電子契約の有効性を定義した法律
電子的な署名の有効性を定めた電子署名法は、2001(平成13)年に施行されました。正式名称を「電子署名及び認証業務に関する法律」と言います。電子契約や手続きに関する要件や電子契約システムを導入するにあたっての詳細な内容もおさえられています。このルールに沿って運用することで、契約書に付与された電子署名が法的効力を持つこととなります。
電子署名法が定められた背景
インターネットを通じて行われる取引や契約が急速に増加したことにより、セキュリティや信頼性に関連する法整備も進められていきます。そもそも対面での取引ではないため、本人確認や改ざんなど安全性・信頼性を不安視する声も挙がっていました。そこで電子署名法と前後して電子取引データの保存方法を定めた電子帳簿保存法やe-文書法など関連する法律も施行されています。
電子署名法の目的とは
電子署名法制定の目的は、電子署名の利用を円滑にするため、電子契約や取引に関するルールを定めたものだと第1条に記されています。法整備により、電子署名の信頼性を確かなものとし、国民生活の向上と国民経済の発展をより進めていくというものです。
- 電子署名法により、国は電子契約を後押し!
電子署名法のポイントをわかりやすく解説
電子署名法は第1〜6章、全部で47条からなります。第4条以降は電子署名を提供する事業者向けの内容が主体となっており、実際に電子契約を行う際、重要になるのは第2条、3条の内容です。ただし条文の内容が抽象的なため、判断に迷うケースも多くなっています。そこでここからは、電子署名法で理解しておきたいポイントをわかりやすくまとめてご紹介します。
電子署名の要件を定めた電子署名法第2条
電子署名法第2条一、二には、どのようなものを「電子署名」と見なすのかが記載されています。要件は次の通りです。
「第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。」
第2条から読み取れるのは主に以下の2点です。
1.電子署名を行った本人が電子データ(当該情報)を作成したことを示すものである
2.電子データ(当該情報)が修正、変更されていないと確認することが可能である
電子データを本人が作成したこと、また途中で改変されていないことを「電子署名」成立の要件としているものの、方法や技術についての具体的な記述はありません。このような抽象的な表現にとどめたのは、電子署名の技術がまだまだ発展過程にあるということが挙げられるでしょう。今後の技術が進化し、方法が変わっても対応できるような記載になっています。
現状の電子署名については、「公開鍵暗号」という暗号技術が用いられています。公開鍵暗号を使った電子署名の仕組みは【図解】電子署名とは?役割や仕組みをわかりやすく解説で詳しくご紹介していますのでぜひご覧ください。
電子契約の有効性を定めた電子署名法第3条
電子契約に法的な有効性について記載されているのが、電子署名法第3条です。以下の要件を満たせば、書面での契約書と同じく「法的効力」を持つ契約書とみなされます。
「第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。」
電子署名法第3条では「本人だけが行える」点が強調されています。契約を行う「本人」による電子署名がされた電磁的記録であれば、「真正に成立したもの」=(イコール)法的効力が認められると記されています。このように第2条の要件を満たすことにより、電子署名を用いた「電子契約に法的効力が認められる」との根拠を明確に示しているのが第3条となります。
書面の契約書の法的効力とどう違う?
電子署名法により、電子契約のルール、法的な根拠は示されています。とはいえ、従来の書面での契約書から電子契約へと移行していいものかどうか、迷う方もいらっしゃるかもしれませんね。電子契約と、紙で取り交わす書面契約とではどのような違いがあるのでしょうか。
実は民法上の「契約」は、口頭での約束でも成立します。しかし口約束では、契約の内容を証明することが難しいケースも少なくありません。契約の内容や条件について「言った言わない」のトラブルが生じ、場合によっては裁判に発展することも考えられます。そこで、契約の内容・条件に双方の合意が明確になり、その証としても契約書は大きな意味を持ってくるのです。実際の訴訟での「契約書」の証拠能力に関しては、民事訴訟法第228条 第4項で次のように定義されています。
「第二百二十八条 文書は、その成立が真正であることを証明しなければならない。
2 文書は、その方式及び趣旨により公務員が職務上作成したものと認めるべきときは、真正に成立した公文書と推定する。
3 公文書の成立の真否について疑いがあるときは、裁判所は、職権で、当該官庁又は公署に照会をすることができる。
4 私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。
5 第二項及び第三項の規定は、外国の官庁又は公署の作成に係るものと認めるべき文書について準用する。」
上記の通り、契約書などの私的な文書が「真正に成立したもの」と推定される根拠として、本人またはその代理人による(意思に基づく)署名や押印が求められることになります。これは書面での契約書の署名・押印はもちろん、要件を満たした電子署名にも当てはまります。「本人又はその代理人の署名又は押印」が存在すれば、電子、書面問わず「真正に成立したもの」と推定されるわけです。そして、電子署名法3条が適用されるためにも、紙の署名・押印と同様に、電子署名法3条に規定される電子署名が付されていること、及び、その電子署名が本人の意思に基づき行われたものであることが必要とされています。
- 電子署名の法的効力は、紙の契約書の署名・押印と同じ!
電子契約サービスについての政府見解をわかりやすく解説
電子署名法では、電子署名の定義や法的に効力を持つ要件が記されています。では電子契約サービスを導入した電子取引のケースではどうでしょうか。
電子契約サービスの有効性については2020(令和2)年に「利用者の指示に基づきサービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化等を行う電子契約サービスに関するQ&A(電子契約サービスに関するQ&A)」という形で示されています。総務省・法務省・経済産業省の連名で公表され、現在は新たに発足したデジタル庁の管轄となっています。内容も2024(令和6)年1月9日付で一部改定されました。電子署名法における「立会人型電子契約サービス」のあり方・位置づけを示した内容です。ここからは、国が定義する電子契約のあり方、見解についてわかりやすく解説します。
電子契約サービスを用いた場合、本人による作成と言えるか
電子署名を行う際、現在は第三者(立会人)が介在する立会人型が主流となっています。立会人型とは、契約をする当事者の指示に基づき、第三者が電子署名を付与するタイプの電子署名です。契約当事者が署名するわけではないため、立会人型を利用するには、電子署名法第2条第一項第1号で定義される「作成された電子署名が本人によるものであること」を示す必要があります。このポイントについて、「電子契約サービスに関するQ&A」では以下のような解釈を示しています。
「利用者が作成した電子文書について、サービス提供事業者自身の署名鍵により暗号化を行うこと等によって当該文書の成立の真正性及びその後の非改変性を担保しようとするサービスであっても、技術的・機能的に見て、サービス提供事業者の意思が介在する余地がなく、利用者の意思のみに基づいて機械的に暗号化されたものであることが担保されていると認められる場合であれば、「当該措置を行った者」はサービス提供事業者ではなく、その利用者であると評価し得るものと考えられる。」
「サービス提供事業者の意思が介在する余地がない」「利用者の意思のみに基づく」のであれば、自動的に暗号化される立会人型のサービスにおいても「本人による署名」と判断できることが明記されています。第三者が介在する立会人型であっても「法的効力が認められる」という点を公式見解として示しているのがポイントです。
電子契約サービスを用いた場合、本人による電子署名と言えるか
電子署名では、契約した本人が署名したのかを示す「真正性」が求められます。電子署名法第3条では、「本人による署名」であると認められた電子署名がなされた電磁的記録であれば、契約が「真正に成立したもの」と推定する旨が記載されています。どのように、この電子署名が「契約者本人のもの」であることを確認するのかが問題となります。立会人型のサービスでは、「サービス提供事業者」の公開鍵暗号技術をした署名鍵が使われるからです。
この点に関して、「電子契約サービスに関するQ&A」は次のような考え方を明らかにしています。
「上記サービスが電子署名法第3条に規定する電子署名に該当するには、更に、当該サービスが本人でなければ行うことができないものでなければならないこととされている。そして、この要件を満たすためには、問1のとおり、同条に規定する電子署名の要件が加重されている趣旨に照らし、当該サービスが十分な水準の固有性を満たしていること(固有性の要件)が必要であると考えられる。」
「電子契約サービスに関するQ&A」では、立会人型電子契約サービスの電子署名が「本人である」と認められるにあたって、必要な水準を満たす「固有性」の担保を求めています。ではどのような要件を満たせば、「十分な水準の固有性」が認められるのでしょうか。要件として、具体的な例を含めて次の2点を挙げています。
① 利用者とサービス提供事業者の間で行われるプロセスに関する部分
② ①における利用者の行為を受けてサービス提供事業者内部で行われるプロセス
この2つのそれぞれにおいて、「十分な水準の固有性が満たされている必要がある」と記載されています。具体的なケースを引用してご紹介すると、例えば①のプロセスでは次のような方法で2要素から認証を行うしくみの活用が紹介されています(注:2要素認証は必須要件ではない)。
- あらかじめ登録されたメールアドレス及びログインパスワードの入力並びにSMS送信又は手元にあるトークンの利用等当該メールアドレスの利用以外の手段により取得したワンタイム・パスワードの入力
- あらかじめ登録されたメールアドレスに配信された時限アクセスURL へのアクセス及び署名用のトークンアプリをインストールしたスマートフォンによる認証
- 利用者専用の電子契約システムログイン ID・パスワードを利用したアクセス及び利用者に対し配布されたトークンデバイスによる認証
サービス提供事業者内部での過程を示したのが②で、こちらの具体的な事例が紹介されています。
- アクセスや操作ログ等が正しく適切に記録され、かつ、改ざんや削除ができない仕様とされていること
- 運用担当者による不正ができないシステム設計、運用設計がされていること
- 正しく適切に運用されていることが監査等で確認するとされていること
- 必要に応じてログや監査等の記録やシステム仕様書等が提出できるよう十分な期間保存するとされていること
結論として、①及び②が行われている立会人型電子契約サービスは「法的効力を持つ」という見解を示していることがわかります。
- 立会人型電子契約サービスは、国が有効性を認めている
- 要件を満たす電子契約サービスを選ぶことが重要ポイント!
まとめ:電子契約は電子署名法に準拠したサービスを利用しよう
「電子署名法」の第2、3条の定義、要件を満たす電子契約で締結された契約書は法的な効力を持ちます。また「公開鍵暗号」技術を用い、契約の締結過程に第三者(立会人)が介在する電子契約サービスを利用する場合も、電子署名の要件を満たすことが政府見解でも明らかにされています。
政府の解釈を示した「電子契約サービスに関するQ&A」では、電子契約・電子署名において「十分な水準の固有性」を満たすことを要件としています。ですから電子契約サービスを導入しようとお考えなら、どのような要件のもとであれば「法的に有効であるのか」を確認することをおすすめします。要件を満たした電子契約サービスなら、ビジネスでも安心して利用できます。
電子契約に関連する法律については、次の記事でも詳しく解説しています。ぜひ参考にしてください。
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